導入増える「配信拠点型の遠隔授業」、先駆けて"教育の地域格差解消"に挑んできた北海道の手応え 9教科30科目を32校900名に配信「T-base」の本気

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離島や中山間地域などにある小規模高等学校は教員数が少ないため、生徒が履修できる科目が限定されることが以前から課題とされてきた。さらに少子化の進行で小規模校が増加し、地域格差はますます大きなものになりつつある。こうした中、課題解決の切り札として、配信拠点型の遠隔授業を導入するケースが増えつつある。その先駆けとして知られるのが、北海道だ。2021年度から「北海道高等学校遠隔授業配信センター(通称T-base)」を設置し、小規模校に対する遠隔授業を開始した。全国の自治体や民間の塾などによる視察も多い北海道の実践を取材した。

「少子化×地理的特性」により小規模校化が加速

第1学年の学級数が1学級のみという道立高校の割合は、1990年代半ば時点では1割未満だったが、中学校卒業者数の減少により現在では約3割に達しているという。そのため道は高校の再編を進めているが、広大な面積に人口が点在している広域分散型の地理的特性により再編が困難な高校は多く、小規模校化が加速している状況にある。

小規模校化については、生徒が多様な考え方に触れる機会の減少や、部活動や課外活動の制約などさまざまな影響が指摘されているが、中でも大きいのが科目設置数の問題だ。北海道教育庁学校教育局高校教育課高校改革推進室主査の柴田朝幸氏は次のように語る。

柴田朝幸(しばた・ともゆき)
北海道教育庁学校教育局高校教育課高校改革推進室主査
道立高校の国語科教諭、北海道教育庁の指導主事を経て、2025年度から現職。単位制や総合学科など、多様なタイプの学校における教育活動への支援や、学校の特色化・魅力化に関する業務を担当

「第1学年1学級のような小規模校では、教員の配置数が少ない状況です。すると必然的に、設置できる科目数も限定されることになります。そのためこれまで小規模校では、生徒の多様な学びのニーズに応えるのが難しいという課題に直面し続けてきました。しかし、住んでいる地域によって教育環境に差が出ることは、生徒の進路実現にも影響を与えることとなり、公教育として避けなければいけないことです」

こうした課題を解決するために、2021年に北海道有朋高校(札幌市)内に開設されたのが、北海道高等学校遠隔授業配信センター(通称T-base)だ。遠隔授業を専任で行う教員が在籍し、地域連携校(※)と離島に対して授業配信を行っている。

※第1学年1学級の高校のうち、地理的状況等から再編が困難であり、かつ地元からの進学率が高い高校

2025年度現在、T-baseに在籍している専任教員は25名。遠隔授業の受信校は32校(地域連携校30校、離島2校)に及び、約900名の生徒が受講している。配信科目数は9教科30科目。体育と美術を除きすべての教科を配信、季節講習も行う。

実は道には、T-base開設以前から遠隔授業に取り組んできた歴史がある。2006年度に策定した「新たな高校教育に関する指針」の中で「遠隔授業等による学校間連携の充実」を明記、2008年度より一部の高校から遠隔授業を開始した。これは地域連携特例校(現地域連携校)に対して、地域の中で比較的規模の大きい高校(地域連携協力校)の教員が遠隔授業を行うというものだった。

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