導入増える「配信拠点型の遠隔授業」、先駆けて"教育の地域格差解消"に挑んできた北海道の手応え 9教科30科目を32校900名に配信「T-base」の本気

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「時間が限られている遠隔授業は1分1秒が大事」との思いから、日常のトラブルも教員間で協力して対応している。「ヘルプミー」と名付けたチャットスペースを設け、授業中に音声やカメラの不具合などのトラブルが発生した際は、状況を書き込んでSOSを出せるようにしている。それを見た手の空いている教員が、すぐに駆け付けてサポートするのだという。

職員室はフリーアドレス制。教員の負担を軽減し、より多くの時間を授業改善に充てられるよう情報共有はチャットで行い、朝の打ち合わせや職員会議は実施しない。「フラットな人間関係の中、出てきたアイデアを歓迎する組織になっていると思います」(佐藤氏)

「多様なニーズや進路希望」に応えるのがT-baseの役割

2021年度に当時の1年生から順次配信を始めたT-baseは、今春2回目の卒業生を送り出した。柴田氏は「難関大志望者向けの講習なども実施していますが、実際に難関国公立大学に進学する生徒も出てきており、取り組みに手応えを感じています」と語る。

生徒が希望する進路は、難関大学だけではない。生徒の多様な学びのニーズ、進路希望に応えるのがT-baseの役割だ。

「T-baseでは、進路支援グループを立ち上げ、看護セミナーや公務員ガイダンスなど、生徒の多様な進路希望に応じたセミナー等も開催しています。例えば公務員ガイダンスでは、現職の公務員を講師として招き、仕事の内容や魅力について生徒が直接話を聞ける機会を設けています。今後も地元の小さな高校で勉学に励んでいる生徒の夢の実現を、現場の先生と共に後押しできる存在でありたいと考えています」(佐藤氏)

受講生徒からの遠隔授業への評価は高く、また受信校の管理職からは「教員がT-baseの授業を見ることが研修になっている」との声も寄せられている。「受信ニーズは高まっており、いかに年々増える受信校にしっかりと対応していけるかが課題だ」と柴田氏は話す。

地域格差の解消を目指すT-baseの実践は、同様の課題を抱える全国の教育現場にとって、示唆に富む取り組みだろう。実際に長崎県や鹿児島県など、離島や中山間地域を多く抱えるほかの自治体でも、T-baseのような配信拠点を設けて遠隔授業を実施する動きが進んでいる。文部科学省も「各学科・課程・学科の垣根を超える高等学校改革推進事業」の中で、離島・中山間地域の小規模校に通う生徒や、不登校など多様な背景を有する生徒を対象に遠隔授業や通信教育を実施する11自治体に対して、機材整備やスタッフの人材育成・確保に関わる費用の支援を行っている。

各地の遠隔授業で蓄積されるノウハウは、今後ICTを活用したさまざまな教育実践の参考になるはずだ。

(文:長谷川敦、写真:北海道教育庁学校教育局高校教育課高校改革推進室提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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