導入増える「配信拠点型の遠隔授業」、先駆けて"教育の地域格差解消"に挑んできた北海道の手応え 9教科30科目を32校900名に配信「T-base」の本気

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「ただし、この方法には課題がありました。特例校1~2校に対して協力校1校という関係で遠隔授業を実施してきましたが、協力校の教員は自校での通常の授業に加えてICT活用が必要な遠隔授業も担当しなければならず、業務負担が重くのしかかることになったのです。また協力校の状況によっては、特例校が希望する科目を必ずしも開設できない場合もありました。T-baseを開設したメリットは、こうした課題の解決のみならず、配信拠点に専任教員を集中化したことにより、質の高い遠隔授業を開発・提供する体制が整ったことにあります」(柴田氏)

遠隔の「強みを生かす授業」と「弱点カバーの工夫」とは?

ではT-baseでは、どのような遠隔授業を提供しているのだろうか。T-base次長の佐藤豊記氏は次のように語る。

佐藤豊記(さとう・とよき)
北海道高等学校遠隔授業配信センター(T-base)次長
道立高校教諭(地歴・公民)を経て、2021年北海道高等学校遠隔授業配信センター(T-base)着任。2023年より現職。遠隔授業の更なる充実・発展に向けて公務に従事

「画面越しとなる遠隔授業では、教員の熱意や雰囲気が伝わりにくいため、対面授業以上に授業の質が問われます。生徒が『もっと知りたい。調べたい』と思えるようなワクワクする授業を展開しないと、生徒の関心を維持させることはできません」

そこでT-baseでは、1人1台端末を効果的に活用し、リアルタイムでのアンケートやクイズ形式の出題などを通じて、ともすれば一方通行になりがちな遠隔授業を双方向性のあるものにしている。

また、1人1台端末であれば、ほかの生徒には見えない形で個別の生徒からの相談や質問に答えることも可能だ。生徒の学習状況を把握したいときには、生徒に端末のカメラで自身のノートや作品を撮影して送信してもらうことで対応。実技科目では、例えば書道は教員が書画カメラで手元の動きを動画で記録し、生徒が後から自分のペースでその動画を確認しながら練習できるようにしている。

さらに、遠隔授業の特性を生かしたT-baseならではの取り組みと言えるのが、合同授業だ。これは複数の受信校の生徒が同時に授業を受講するもので、普段は限られた人間関係の中で学習している小規模校の生徒たちにとって、他地域の同世代と交流する貴重な機会となっている。

家庭科の授業(左上)、クロマキー合成を活用した歴史総合の授業(右上)、函館美術館と連携した書道の特別合同授業(左下)、夏期講習(右下)

「例えば書道では、函館美術館と連携して2校合同で書道作品の鑑賞の授業を実施しました。美術館が所蔵する作品を学芸員の方に解説していただき、その後、生徒たちはアバターを使って仮想空間で意見交換を行いました。こうした合同授業は、対面で実施すれば多大な費用と時間がかかります。遠隔授業だからこそ実現できたと言えます」(佐藤氏)

また学力差の大きい英語・数学・国語については、習熟度別授業を原則としている。複数の受信校から学力レベルが同程度の生徒を集めて授業を行うことで、よりきめ細かな指導ができている。

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