大阪の名門・北野高校、「京大合格107人」快挙の裏に"自律"で磨く異質な強さ 進路を指導でなく支援、特別な入試講習なし
豊富な人脈を生かして、キャリア教育でもOBOGが後輩を支えている。1年次の「職業ガイダンス」では、さまざまな分野で活躍する卒業生が講演。ノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏や、JAXA副所長の藤本正樹氏など、多くの著名な卒業生が来校した。
2年次には「学部学科ガイダンス」として京都大学や大阪大学に進学した学部生や院生が、生徒にそれぞれの学部で学ぶ内容や大学生活などを語る。
「講演の目的は、将来どういう形で社会に貢献できるか、そのイメージを描かせることです。JAXA相模原キャンパスに生徒を連れていったときには、藤本氏の協力で宇宙工学の最先端を見学することができました。生徒たちは刺激を受けたようです。
学外のものをどれたけ見せて、体験してもらうかが大事だと考えています。教員が進路を導くのではなく、生徒がさまざまな職業を知り、そこに至るまでの進路を自分で調べる。そして、どこで学ぶのがいいのかを考えてもらいます。もちろん、わからないことは聞いてもらってもかまいませんが、まずは自主的に調べ、考えることが基本です」
京都大学のほかに、2025年度は大阪大学59人、同志社大学199人、立命館大学114人など、難関国私立に大勢の合格者を輩出したが、大学入試のための講習などは行っていないという。
「そのかわり職員室の前では、毎日のように3年生が教員に質問したり、教員を囲んで数学の問題を解き合ったりする姿を見かけます。教員にとっては、むしろ決まった時間に講習をやる方が楽だと思う。よくやってくださっていると感謝しています。共通テストも、ちゃんと授業を受けていれば特別な対策は必要ありません。共通テストの狙いである思考力や読解力は、本校の強みとするところです」
生徒の心のケアに配慮しているのも、同校の特徴の1つだ。週に1回、臨床心理士のスクールカウンセラーが来校し、生徒や保護者の相談に応じている。また教職員も教育相談研修を行い、生徒のケアに務めている。
「本校に進学するのは、中学校で成績トップを取っていた生徒です。ところが高校に進学したとたん、もっと優秀な生徒がいてトップの座から下ってしまう。教員は周りと比較するのではなく自身の成長に目を向けるように指導しているのですが、なかなかその境地に達することができない生徒もいます。優秀な生徒だけに、悩みも深い。身近な先生に言いにくいことも、カウンセラーなら相談しやすいだろうと」
努力は褒められるためではなく、自分のために
大阪府では2026年度から府内在住の世帯を対象に所得制限をはずし、私・公立ともにすべての高校を無償化する。それを受けて、2025年度の大阪の中学入試は活況を呈している。中高一貫の6年に対し、3年という限られた期間で私立にどのように対抗していくのか。