複数の自治体で効果検証、自由進度学習で「深い学び合い」ができている学級、3つの共通点 「学び方の自由の保障」で不登校が減った例も

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すると、ある小学校のScTN質問紙の結果は、「授業では、『授業を進めるのは、先生ではなくて、自分だ』と思いながら学んでいる」「授業では、挑戦と失敗を繰り返しながら、問いや課題の解決に取り組んでいる」の肯定率※2が9割を超えるなど、全国値※3よりはるかに高い値を記録するとともに、単元テストでもつねに正答率は学級平均85%以上の結果が得られるようになったとのことでした。

※2 全回答に占める上位2選択肢の回答の割合
※3 ScTN質問紙の作成時に全国の小中学生計2400名に調査した結果。1つ目の項目はおよそ1割、2つ目の項目はおよそ3割の肯定率

芦屋市が2024年度より研究指定校制度を廃止して立ち上げた、完全自主性の教員研究組織「ONE STEPpers」は、先生たちの学びを変えて成果が出たケースです(詳細はこちらの記事を参照)。この活動の特長は、子どもの主体性の回復に関する研究であれば内容や手法を自由に選択できることで、自由進度学習に関しても、プロジェクト型の研究に参加したり、先進校を視察したりといったさまざまなアプローチが見られます。

子どもたちに自由を保障し、「授業の主体は自分だ」という子どもたちの意識を高めたいのであれば、先生たちの取り組みにも自由が必要ということがわかる事例と言えます。また芦屋市では「よい教師とは」といったテーマについて語り合う哲学対話も実施していますが、そうした本質への深い理解や納得が先生たちのまなざしや振る舞いを自ずと変え、子どもたちの自由の保障につながることを実感しています。

自由進度学習で「深い学び合い」に至るための3つの共通点

――自由進度学習の課題とその解決策についてお聞かせください。

主には、以下の2つの課題があると考えています。

1:場は共にしていても、思考は共にしていない

2:形式のみの自由

 

1の課題は、多くの学校で生じている現象ではないでしょうか。子どもが仲間の表情やノートなどに持続的に注意を向けたり、何かを共同注視して共に考えたりしている時間が十分ではないのではないかという問題提起です。「類は友を呼ぶ」状態に終始し、学びに広がりや深まりをもたらす多様な関わりが生じていないこともあります。

この課題を解決する工夫は主に3つ。まずは「魅力的なプロジェクトの設定」です。例えば、国語で「落語」について学ぶ単元の名称を教科書を参考に「めざせ!落語家」とすることで興味や関心をかきたて、やればやるほど思いや考えを広げたり深めたりできるようにするのです。

2つ目のポイントは、「誰かの手助けがあれば達成できる、適度に挑戦的な目標の設定と共有」です。これは学習指導要領の研究が肝であり、単元表やルーブリックなどを使って子どもたちと合意しながら設定していくことも大切です。

最後の3つ目は、「計画的に偶発させたペアやグループの編成」です。授業では協同の自由が保障されます。だからこそ、子どもたちの意思が及ばないランダム編成の生活班などをつくることで、「類は友を呼ぶ」状態を脱した学び合いが生まれるようにするということです。

自由進度学習が深い学び合いにまで至っている学級では、こうした3つのポイントが共通して押さえられていると分析しています。

――もう1つの課題、「形式のみの自由」とは?

単元表やルーブリックといった“授業の形式”は整えているものの、先生のまなざしや振る舞いが従来と変わらないがゆえに子どもの選択や決定が大きく制限されている場合があります。昔からピグマリオン効果(教師期待効果)として指摘されているとおり、子どもたちに対してポジティブな期待を持ち、委ね、じっくり待つことは依然として重要だということです。

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