採用控えた代償の重さ、この4月も担任がいない…「教員不足」を根本的に解決する方法 教員の基礎定数を改善する計画と財源確保を
ところが、この「毎年」というのが実は重要なポイントになる。加配定数とは、単年度限りの定数を意味している。国が加配定数をいくら増やしても、その加配定数が翌年度にも維持される保障は、まったくない。
そのため地方自治体は、国が加配定数分の予算をいくらつけてくれても、教員を正規雇用する計画は立てにくいのである。
つまり、地方自治体が採用控えの数を適正化できるようになるためには、「加配定数」ではなく正規雇用教員の財源を保障する定数、つまり「基礎定数」の改善計画が必要不可欠なのである。
今、最も必要な政策とは
要するに、地方自治体が教員の雇用控えを減らして、教員不足を少しずつ解消していくためには、国が中長期的にどれくらいの財源保障をしてくれるのかについての、長期的な見通しが立つことが必要不可欠なのである。
そのためにも、1959年からずっと続けられていたのに、2005年で打ち止めになったままの教職員定数改善計画を再開することが、今最も必要な政策だといえる。
冒頭で述べた、中学校35人学級化にむけた昨年末の大臣合意は、基本的には喜ばしい朗報である。ところが、事前の計画もまったくない中で、突然、来年度から35人学級化にするぞ、教員需要を増やすぞ、といわれても、地方自治体や学校現場はかえって混乱してしまう可能性が高い。
まず、もはや教員採用を募集しても、応募者が集まらないところまできてしまっているからだ。昨年度は、教員採用試験の応募者が、募集数を下回ってしまう学校種や教科も出てきていた。いきなり2026年度から中学校の教員需要が増やされることになったが、2025年春の教員採用試験で本当に十分な教員志望者を確保できるのか。
また、増えた需要分を一度ですべて正規雇用することは、実際には難しいだろうから、今でさえ足りない非正規の先生を、さらに確保することはできるのか。
このように、安定して正規雇用・非正規雇用の教員を確保していくためには、長期的な計画が必要なのだ。
教員不足を改善するための計画は急いで決定してほしいが、定数改善のスピードは、むしろゆっくりで構わない。細くてもよいから長く、中長期的に教員の基礎定数を改善する計画が示されること、その財源保障の見通しが示されることこそが、地方自治体の教員不足対策への確かな支援につながっていく。
少子化が進んでいる今は、改善計画を再開するには、むしろチャンスである。少子化で教員需要はいずれにせよ急激に減少していくのだから、教員の総実数を増やさなくても、基礎定数を増やすことによって子ども1人あたりの教員数を増やすことが可能になるからだ。国にはぜひとも、第8次教職員定数改善計画を再開していただくことを期待したい。
なお、もしもこのまま教員不足が放置されると、先生が確保されてきちんとした教育を受けられる子どもと、そうでない子どもとの差が広がり、国全体の分断が深刻化してしまう可能性が高い。これからの日本の未来をどうするのか。社会全体での議論が、今求められている。
(注記のない写真:yukiotoko / PIXTA)
執筆:慶応義塾大学 教職課程センター 教授 佐久間亜紀
東洋経済education × ICT編集部
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