採用控えた代償の重さ、この4月も担任がいない…「教員不足」を根本的に解決する方法 教員の基礎定数を改善する計画と財源確保を

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教員不足が起きたメカニズムを探る

その一方、2021年度末時点で、この年度に産育休・病休を取得した教員の数を調べたところ、産育休は867人、病休取得者は87人だった。つまり、この年度に本来必要とされたはずの臨任の需要は、X県合計で954人だったことがわかった。

佐久間亜紀(さくま・あき)
慶応義塾大学 教職課程センター 教授
早稲田大学教育学部卒業。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学、博士(教育学)。東京学芸大学教員養成カリキュラム開発研究センター准教授などを経て現職。専門は教育方法学、教師教育論。日本教育学会理事、日本教育方法学会理事、日本教師教育学会理事。教師の力量形成を研究・実践し、各地の学校現場で授業づくりに取り組む。近著に『教員不足-誰が子どもを支えるのか』(岩波書店)
(写真:本人提供)

文部科学省や多くの教育委員会は、臨任のなり手が不足したことが教員不足の原因だという説明を繰り返している。しかし、X県のデータをみれば、5月に臨任の先生を1821人も配置できていたのだから、本来の需要954人を大幅に上回る供給数が存在していたことがわかる。

もしも、4月にきちんと教員が採用されて配置されていれば、臨任の供給は十分すぎるほど足りており、教員不足は起きなくて済んだはずだったのだ。

要するに、X県のデータを見る限り、教員不足の主たる原因は、非正規雇用教員のなり手が減ったことではなく、非正規雇用教員の需要が増えすぎていたことにあった。県教委は、翌年度に必要な正規雇用教員数はあらかじめわかっていたけれども、必要な先生の数をすべて正規採用することができていなかったのである。

教員の採用控えが大きくなりすぎて、非正規雇用の受給が供給をはるかに上回ってしまったことが、教員不足を引き起こしていた最大の要因だったといえる。

これはX県のデータにすぎないが、おそらく全国的にも同様のことが起きていたと推測される。

ちなみに、正規雇用教員がどれくらい不足していたのか、その量を具体的にイメージするために、年度当初の欠員1971人をX県の総学校数504校で割ると、1校当たり3.91人になる。各学校に必要な担任が約4人ずつも、あらかじめ採用されず、非正規に置き換えられていた計算になる。

そして、このX県で不足している先生の数には、授業だけを担う非常勤講師の先生の数は含まれていない。あくまでも、学校の運営や学級担任をする常勤の先生がどれだけ足りないか、というお話である。

教員の非正規化には都道府県格差がある

いわゆる担任の先生が、どれくらい採用控えされ、非正規雇用に置き換えられているかについては、文科省が公表しているデータからも確認できる。

都道府県・政令市ごとに教員の正規雇用教員の採用率を見てみると、義務標準法で定められた標準的な教員の数を、きちんと正規雇用教員(グラフの青い部分)として採用できているのは東京都しかない。都道府県によって教員の雇用状況には大きな格差があることがわかる。

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