「アルゼンチンのトランプ」意外な1年の通信簿 通貨安定のためにリバタリアンが採った手段

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ところで、ミレイ大統領は、ドル化に踏み込むだろうか。

こればかりは正直、わからない。しかし、アメリカで基軸通貨としてのドルの位置づけを重視するドナルド・トランプ大統領が就任することは、ドル化を断行するなら間違いなく追い風となる。

しかしドル化を断行すれば、ペソ資金が強制的に回収されるため、強烈な引き締め効果が生じる。

それよりも、市中レートと公定レートという二重相場状態を是正し、変動相場制度に移行したうえで、対ドル相場の安定が図られた時点でカレンシーボード制(固定レートの下で国内の貨幣供給量を中銀や政府が保有する外貨準備高と同額に制限する相場制度)を導入することの方が、アルゼンチンにとって現実的な通貨政策であるかもしれない。

改革の「痛みと果実」の時間軸

アルゼンチンのような供給不足の国が市場化・自由化改革を行うことは、経済学的には正しい。一方で、それを進めるためには、国民が生活の安定や向上を短期のうちに実感できなければならないという難しさがある。

就任1年目は改革の痛みが先行したが、2年目に当たり果実を国民に分配できるかが、ミレイ大統領の改革路線の成否を握る。

そもそも、改革の痛みと成果のバランス、そのタイムラインという問題は、日本を含めたあらゆる国に共通するものだ。問題が軽いうちに手を付けることができれば痛みは軽くなるのも、また自明の理である。

土田 陽介 三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部副主任研究員

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つちだ ようすけ / Yosuke Tsuchida

2005年一橋大経卒、06年同修士課程修了。13年同博士課程単位取得退学。株式会社浜銀総合研究所を経て現職。 欧州を中心にロシア、トルコ、新興国のマクロ経済、経済政策、政治情勢などについて調査・研究を行う。主要経済誌への寄稿、学会誌への査読付き論文多数。著書は『基軸通貨‐ドルと円のゆくえを問いなおす』(筑摩選書)『ドル化とは何か‐日本で米ドルが使われる日』(ちくま新書)『脱炭素・脱ロシア時代のEV戦略 EU・中欧・ロシアの現場から』(分担執筆、文眞堂)。 関東学院大学経済学部非常勤講師。

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