「アルゼンチンのトランプ」意外な1年の通信簿 通貨安定のためにリバタリアンが採った手段
経済運営の失敗から、定期的に通貨危機に見舞われてきたアルゼンチン。就任1年のミレイ大統領は荒療治を進めてきた。
「アルゼンチンのトランプ」と言われるハビエル・ミレイ大統領は2023年12月、ドル化(自国通貨を廃止して米ドルを法定通貨とすること)を公約に掲げて就任したが、就任1年が経っても、まだドル化には踏み込んでいない。
つまり、自国通貨であるペソを維持しているわけだが、そのペソの対ドル相場はこの1年間、荒い動きながらも、一方的な下落には歯止めがかかっている。
ペソの相場は、中銀が定める公定レートと、市中レート(闇レート)に分かれている。公定レートはミレイ大統領が就任した2024年12月からの1年間で、おおむね6割減価している。一方で、この間の市中レートの下落幅は、約2割にとどまっている。その結果、公定レートと市中レートの乖離も、6割程度から2割程度にまで縮小している。
2023年12月の市中レートは1ドル=1200ペソあたりであり、1年後の2024年12月は1200ペソをやや上回る程度だった。通年ではプラスマイナス16%程度の大幅な振れ幅を伴っているとはいえ、2023年の市中レートの下落率が170%を超えていたことに比べると、2024年に入って、ペソの市中レートは安定感を強めたと評価して差し支えないだろう。
利下げしながら通貨安定
他方で、この間、物価と通貨の番人であるアルゼンチン中銀は、むしろ利下げを進めているという興味深い事実がある。
アルゼンチン中銀はミレイ大統領が就任した2023年12月、政策金利を年133%から100%に引き下げた。以降、2024年12月までに、政策金利は32%まで引き下げられており、近年では稀に見る低水準だ。
反面で、2024年12月の消費者物価は前年比117.8%と、ピーク時である同年4月(同289.4%)から上昇が鈍化しているものの、依然として高水準である。
このインフレの水準に鑑みれば、政策金利は実質的にマイナスであるはずだが、少なくとも市中レートの一方的な下落には歯止めがかかっている。これはいったい、どうしてだろうか。
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