日本人が知らない「リバタリアン大統領」の真価、ハビエル・ミレイはアルゼンチンをどう変えたのか

「アルゼンチンのサッカーの試合は美しい。スタンドは水色と白にペイントした観客であふれ、活気に満ちている。でもそれは結果を決定づけはしない。観客がどれだけ叫ぼうが、ボールは動かない。ゴールを決めるのはメッシなんだ」ーーこれはハビエル・ミレイ大統領が2024年11月にコンピュータ科学者であるレックス・フリードマン氏のインタビューで語った印象的な一言だ。
アルゼンチンを率いるミレイ大統領(1970〜)はチャカリタやサンロレンソなど、ブエノスアイレスのサッカーリーグのユースチームでゴールキーパーを務めていたことがある。元ゴールキーパー、現役の経済学者、世界初のリバタリアン大統領である。
GDP成長率はプラスに転換
ハビエル・ミレイがアルゼンチンの大統領に就任し、世界初のリバタリアン政権が誕生したのは2023年12月のことである。そこから現在に至る歩みをみることは、今後のトランプ政権の行政改革の成否を占ううえでも有意義な作業といえる。
ミレイ政権ではアルゼンチンの財政赤字の削減が進み、通貨の供給も抑えられたことから消費者物価指数は前月比ベースで就任当初の25.5%が2024年12月には2.7%に、前年比ベースでは211%から同月118%まで低下している。前年比マイナスが続いていたGDPの実質ベースの成長率も、昨年第3四半期に前期比でプラスに転じ、国際金融分野のエコノミストからもまずまずの評価を得ている。
就任後まもなく大規模な規制緩和策を発表し、大統領令により不動産契約や貿易の手続きが簡素化されるなど経済活動の自由化が進んだほか、国有企業の民営化、労働規制の緩和、林業・工業・製鉄・エネルギーなどでの大型投資の奨励を定めた経済改革法案(Ley de Bases)も昨年度中に国会で可決・施行されている。
テスラの経営者として知られるイーロン・マスクが率いるDOGE(政府効率化省)に先駆けて2024年7月に国家規制撤廃・変革省が設立され、規制緩和は継続中だ。今年2月のCPAC(保守政治行動会議)でミレイ大統領からマスクに国家機構の削減を象徴するチェーンソーが贈られたのは記憶に新しいが、チェ・ゲバラで知られ債務不履行がお家芸だった国の大統領が今や保守系の経済フォーラムで賞賛され、アメリカの歳出削減のインスピレーションになっているとしたら隔世の感がある。

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