「アルゼンチンのトランプ」意外な1年の通信簿 通貨安定のためにリバタリアンが採った手段

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縮小

ペソの市中レートが安定感を強めている最大の理由は、アルゼンチン政府に対する市場の信頼感が強まっていることにあると考えられる。

では、なぜ市場が政府に対する信頼感を高めているかというと、ミレイ大統領がその公約に従い、政府機能の縮小に努めているからだと評価される。

ミレイ大統領は就任以降、18あった省庁を半分に減らした。その結果、アルゼンチンの歳出(4四半期後方移動平均)は急速に減少し、最新2024年7~9月期で名目GDP(国内総生産)の17.4%と、1年間で2割以上も減少した。

一方で、同時期の歳入は同17.1%だったから、財政収支は0.2%の赤字と、ほぼ均衡するに至っている。歳出から利払い費を除いた基礎的財政収支は、すでにプラス圏内だ。

つまり、金融面からは引き締めが緩んでいるが、財政面からの引き締めは厳しいままである。

「小さな政府」目指し、民営化進める

国有企業の民営化にも野心的なミレイ大統領は、当初は41の国有企業の民営化を目指していたが、議会との妥協を余儀なくされ、対象は8社にまで減少した。とはいえ、民営化そのものがタブーだったアルゼンチンとしては、かなりの前進である。

いわゆるリバタリアン(自由主義者)を自称するミレイ大統領は、その信念のままに、小さな政府を目指していることになる。

言い換えれば、それは、左派ペロン党政権の下で統制的な経済運営が続いてきたアルゼンチンにとっての、市場化・自由化改革でもある。痛みを伴うものだが、混乱の収束を期待する国民の支持は根強いようだ。

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