東洋⼤学「学⼒テストのみ」推薦⼊試の衝撃、文科省は不誠実?本当の論点 学生にとっても現状の仕組みはベストではない
ただ、今回のような入試をこれ以上広げるべきではない、という意見にも一理あります。例えば、両大学は「学力テストだけでなく、校長の推薦書や調査書も見て判定している」「高校教育に影響が出ないよう出題範囲やレベルを考慮しており、特別な対応は必要ではない」といった主張をされているようです。
ですが東洋大学の場合、2万人近い受験生から600人の募集定員に対する合格者を選抜するわけで、その合否を決めるために推薦書や調査書をどの程度活用しているのかが、高校側が気にしている点であるはず。
実質的に、ほとんど学力テストのスコアだけで合否の線引きをしているのだとしたら、高校側は「特別な対応は不要」とは思えないでしょう。志願者を限定しただけの一般選抜だ、という見方が出るのも無理はありません。このあたりは大学側の説明も少々不足しているように思います。
高校側、大学側にそれぞれ言い分があります。生き残りを賭けた学生募集戦略や日々の授業への影響など、お互いに譲れない事情もあるのでしょう。
得点だけの年明け入試と、学力軽視の年内入試のままでよいのか
今回は文科省も含めた各ステークホルダーが大学入試のルールを参照しながら、これは学力テストだけだから一般選抜だ、いや書類も見ているから学校推薦型だと主張をぶつけ合っているわけですが、この議論自体がやや不毛であるようにも思えます。学生の成長が置き去りにされていないでしょうか。
18歳人口の減少が続く今、大学関係者の間では、数に頼らずに質を確保するための入試や高大接続のあり方が議論されています。どのような入試であれば、進学後に伸びる学生を正しく評価できるのか。進学後の追跡調査を行いながら、あるべき入試の姿が検討されています。

膨大な字数の志望理由書や、正解が一つではない問いなど、高校側からすれば指導に困るような入試もありますが、大学側からすれば「この入試で高い評価を得る学生ほど本学で大きく伸びる」という考えがあるわけです。