東海道線「村岡新駅」、周辺開発が抱える問題点 鎌倉市役所移転の行方や駅反対派の主張は?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

さらに鎌倉市側の深沢エリアの開発も、難しい問題をはらんでいる。鎌倉市役所本庁舎の移転問題である。鎌倉市は、現在は鎌倉駅西口から数百メートルの距離にある市役所本庁舎を深沢エリアに移転して、まちづくり事業のシンボルとし、投資の呼び水とする腹づもりだが、この計画がなかなか前に進まないのだ。

鎌倉市役所本庁舎
鎌倉駅近くにある現在の鎌倉市役所本庁舎(写真:PIXSTAR/PIXTA)

というのも、市役所本庁舎の移転には、地方自治法4条1項に基づき、市議会において市役所の位置を定める条例の改正議決(出席議員の3分の2の賛成を要する特別多数決)が必要となるが、2022年12月議会において、賛成16・反対10で否決されたのだ。このときは主に自民・公明系が賛成、共産・立民系議員が反対にまわった。そして、その後も調整は進まず、松尾市長は位置条例改正案の2023年9月議会への再提出を断念した経緯がある。

この問題の推進派・反対派の意見は多岐にわたり、ここで論じきれるものではないが、推進派の主な意見は現本庁舎の老朽化、耐震強度不足による防災・復旧拠点としての脆弱性などを掲げている。一方の反対派は、現庁舎は補強等によりまだまだ使えるにもかかわらず、移転するのは無駄であること、移転先の深沢の地盤が脆弱であり、津波・浸水等の危険性も高いことなどを理由に挙げている。

市庁舎移転問題、今後の見通しは?

では、今後の見通しはどうなのか。間もなく、2025年4月に鎌倉市議会議員選挙が控えているが、先の衆院選の結果を見れば、自民・公明系がかなり苦しい戦いを強いられるとの見方が強い。

仮に鎌倉市役所本庁舎の移転と深沢の開発が頓挫したらどうなるのか。藤沢市は、村岡地区開発による経済効果を年間約540億円と試算しているが、これは当然、深沢エリアとの一体開発を前提とした数字であろう。わずか8.6haの村岡エリアの単独開発の効果は限定的だ。また、村岡新駅に関しても、BRTなどを介して深沢とつながることを前提に鎌倉市役所の職員や深沢の住民の利用を見込まなければ、JR駅として立ち行かないのは明らかだ。

村岡新駅 湘南深沢付近 湘南モノレール
深沢整備事業地の東端に位置する湘南深沢駅付近を走行する湘南モノレール(筆者撮影)
【写真の続き】村岡新駅の予定地付近、現状では線路をまたぐルートは2つ。どんな道なのか?

藤沢市やJRにしてみれば、新駅はできたものの深沢が野原のままという状況は、当然避けたい。また、鎌倉市としても、そうなれば何のために新駅設置費用を拠出したのかということになる。

位置条例の改正が議会で通らなかった場合、「本庁舎は現在地でそのままに、深沢には分庁舎扱いとする新庁舎を建てる」といった案が鎌倉市役所内で、すでに内々に検討されているという声も漏れ聞こえてくる。しかし、本庁舎と新庁舎、2つもの市庁舎を維持するのは「それこそ税金の無駄遣い」(関係者)であろう。プレイヤー全員にとっての最適な落としどころを探すのが、極めて難しい問題なのである。

この記事の画像を見る(10枚)
鉄道最前線の最新記事はX(旧ツイッター)でも配信中!フォローはこちらから
森川 天喜 旅行・鉄道作家、ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

もりかわ あき / Aki Morikawa

現在、神奈川県観光協会理事、日本ペンクラブ会員。旅行、鉄道、ホテル、都市開発など幅広いジャンルの取材記事を雑誌、オンライン問わず寄稿。メディア出演、連載多数。近著に『湘南モノレール50年の軌跡』(2023年5月 神奈川新聞社刊)、『かながわ鉄道廃線紀行』(2024年10月 神奈川新聞社刊)など

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事