東海道線「村岡新駅」、周辺開発が抱える問題点 鎌倉市役所移転の行方や駅反対派の主張は?
一方、新駅南口整備予定地から500mほど南東側を流れる柏尾川の対岸に広がるのが、鎌倉市深沢地区の遊休地(旧国鉄清算事業団用地およびJR鎌倉総合車両センター跡地)だ。
鎌倉市はこのエリアに市役所本庁舎や消防本部・消防署を移転させ、まちづくりのシンボルとするほか、スポーツ施設、商業施設、都市型住宅等を整備する計画だ。まちづくりのテーマとして「ウェルネス」を掲げ、「ウォーカブルなまちづくりを目指す」(松尾崇市長)という。
さらに村岡新駅と深沢整備事業地の東端に位置する湘南モノレールの湘南深沢駅を結ぶ「シンボル道路」(今後、整備予定)上には、BRT(バス高速輸送システム)など何らかの新たな交通手段を走らせ、両エリアを結節することになると思われる。

今回、あらためて現地に足を運んでみると、新駅予定地の北側には湘南アイパークや、先端医療センターを併設する湘南鎌倉総合病院などの巨大な施設が建ち並び、周辺には住宅も多い。一方、南側は神戸製鋼所の藤沢事業所などはあるものの、南口交通広場の整備予定地付近には農地が広がっている。こんな場所に駅をつくるのかという思いとともに、用地の確保は進んでいるのだろうかという疑問も湧く。

「新駅反対派」の論拠とは?
そこで、かつて鎌倉市長選に2度立候補した経験を持ち、事情に明るい岩田かおる氏に話を聞くと、次のような状況だという。
「南口整備予定地の地権者は20名程度。現在、藤沢市や土地区画整理事業を担当しているUR都市機構の担当者が交渉に当たっているが、ほとんどの地主が代替地の提供などにより、移転に応じている。反対している地主はごく少数」だという。

実は、岩田氏は現在、村岡新駅設置等への反対運動を進めており、「反対派の地主と交渉して、土地の所有権を移転してもらおうとしている。その土地を反対派メンバーで共有し、反対運動のシンボルにしたい」という。なぜ反対するのかを問うと、「第一に、藤沢市域に設置される新駅の建設に鎌倉市が費用を拠出するのは問題だ」と言う。
新駅設置に関わる事業費は、2023年12月時点で159億円と見積もられている。このうち県が30%、JR東日本が15%を負担し、残りの27.5%ずつを鎌倉、藤沢の両市が負担することが取り決められている。これに従えば、鎌倉市、藤沢市の負担は、それぞれ約44億円ずつということになる。
「巨額の負担になることから、鎌倉市では深沢の土地区画整理事業で発生する保留地処分金を充てるとしているが、事業区域外の駅の設置事業へ処分金を流用するのは土地区画整理法の趣旨に反する」と岩田氏は言う。
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