【産業天気図・百貨店】長雨と暖冬でにわかに減速感。勝ち組と負け組の差も顕著に
百貨店業界は、従来の強気姿勢が一転、慎重に転じつつある。日本百貨店協会によると、全国売上高は06年4~10月の7カ月間中、9月を除き、全て前年同月比マイナスだった。上期が春の長雨と夏の梅雨明け遅れによって、粗利の高い衣料品が軒並み不振だったからだ。下期については、今冬の長期予報は暖冬なうえ、前下期が厳冬で元々のベースが高いため、プラス成長はかなり難しい。春先の「もっと利益が伸びるのでは」といった見方は、多くの社で鳴りを潜めている。
個別企業で見ると、勝ち組と負け組の差が一段と開きつつある。「勝ち組」で今回増額修正したのが、高島屋<8233.東証>や大丸<8234.東証>、阪急百貨店<8242.東証>など。いずれもいち早くリストラを終え、新店出店や本店大改装など攻めの投資に転じた企業だ。また新宿本店本館を改装中の伊勢丹<8238.東証>も、増額修正こそしないものの、当初予想から利益は高水準で、過去最高益を更新する見込み。
逆に「負け組」は依然として三越<2779.東証>か。東京・武蔵村山市でイオン<8267.東証>系のショッピングセンターに出店するなど方向転換を模索しているが、効果が出るには時間がかかる。また意外なところでは、丸井<8252.東証>のようにキャッシングサービスで儲けていた企業は、貸金業法改正の影響によって、中期的に収益面への打撃は避けられまい。
来07年度についてだが、大きな要素は天候だろう。ただ、天候は中立としても、08~09年にも導入が予想される消費税率アップを前に、駆け込み需要のような動きが起こるかどうか。来夏の参院選の結果も踏まえ、今後は政策的な要因も各社の収益を大きく左右しそうだ。
【大野和幸記者】
(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部
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