私大の半数超「定員割れ」、大学が突然破綻…教育機会が失われた学生の行方 淘汰時代へ「早期是正と学生保護」の必要性
一般的に、大学と学生の間には、学生側が授業料などを支払う一方で、大学が授業等の教育役務を提供する「在学契約」が継続していると考えられる。破綻を理由にした他大学への編入などは容易ではなく、契約者としての学生を保護する観点が重要だ。そこで、私立大学(学校法人)が経営破綻した際、学生の教育機会を確保し、安心して学業を続けられるようあらかじめセーフティネットを構築する必要があるのではないか。
大学の経営指標と「早期是正措置」の必要性
通常、経営破綻は突然発生するものではなく、経営悪化に陥っている組織を経営改善あるいは早期に退出させるといった事前措置のほうが、経営破綻後の措置よりも契約者や取引先、債権者の負担といった社会的コストが小さく済む。

第一生命経済研究所 総合調査部 研究理事
1990年4月に第一生命保険入社。1997年4月から第一生命経済研究所に異動。2006年4月に公益社団法人経済同友会に出向。2018年4月から第一生命経済研究所政策調査部長等を経て、2023年4月から現職。財政・社会保障や教育分野における調査研究および政策提言活動に従事している。専門分野は財政・社会保障、教育
(写真:本人提供)
大学に置き換えると、経営改善の見込めない大学について計画的に規模の縮小や統合・撤退などがなされるように、所轄庁が経営指標に基づいて指導・命令を発動する。それでも経営困難となり破綻した場合に備え、事後措置として「学生保護機構」(仮称)を活用するといった両面から備えておく必要がある。
まず事前措置については、大学を設置認可してきた国が経営の持続可能性に課題を抱える大学や学部に是正命令を発動し、早期に再生・再建に向けた措置を講じなければならない。例えば、国は経営判断を各学校法人の自主性に任せるだけでなく、私学事業団の「経営判断指標」といった経営指標等を参考に、経営の継続性や健全性を客観的に把握する観点から「早期健全化指標」を設定する。
そのうえで、経営判断指標に基づいた「早期是正措置」を導入することで、突然の経営破綻を回避し、経営を早期に改善させる必要がある。こうした取り組みを迅速かつ効果的に行うためには、国が必要な是正命令を発動するなど「早期是正措置」に法的拘束力を持たせることも検討すべきだ。