聞こえているのに聞き取れない?聴覚検査は正常な「聞き取り困難症」の実態 聞き間違いは"天然キャラ"のせいじゃない

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前者の「音を大きく聞こえやすくする機器」には、デジタル補聴器や補聴援助システムが挙げられます。補聴援助システムは、話す人の声をワイヤレスマイクで集めて受信機に送るもの。授業で先生にワイヤレスマイクをつけて話してもらい、お子さんは耳に受信機をつけます。何人かで会話するときは、マイクを手に持って相手に向けることで聞き取りやすくなります。

後者の「雑音を防ぐ機器」には、ノイズキャンセリング機能付きのイヤホンやヘッドホン、音量調整ができるデジタル耳栓があります。

人間はいろいろな方向から音を聞き、頭の中で統合します。しかしLiP/APDの人の中には、左からの音が3割くらいしかわからないという人や、聞くための注意を保持するのが苦手という人もいます。脳のメモリーが10あるとしたら、普通の人が2メモリーで済むところを、LiP/APDの人は6メモリー使って聞き取るような感覚。聞き取るだけでとても疲れますし、聞いたことを覚えたり考えたりするなど、他のことにあまりメモリーを使えないのです。

なるべく早く気づいて環境を整備しよう

──LiP/APDのお子さんにはどんな合理的配慮が必要ですか?

自分にどんな困難があるのか、どんな支援が必要なのか、LiP/APD当事者が自分で説明できることが大切です。私たちの病院では、当事者のお子さんと保護者に検査の結果を詳しくお伝えしたうえで、どうしていきたいかを話し合います。そして、特性に合った機器を伝えて診断書を書きます。

診断書には、お子さんのLiP/APDの背景や特徴のほかに、「補助機器の使用が必要」「1対1の会話は最初に声をかけてから始める」「指示は簡潔に行う」「書面を併用して伝える」など、必要な合理的配慮も記入します。この診断書を見せながら、「補助機器を使用したい」と学校にも説明してもらいます。

環境整備も必要です。例えば、授業をなるべく静かな環境で受けられるようにしたり、騒々しい場所で肩を叩いてから話しかけてもらう、聞き取りの注意が続かないときに一声かけてもらう、などもよいでしょう。

──小さいお子さんの聞き取りにくさに、周囲の大人が気づくポイントはありますか?

言葉の遅れや発音が苦手なお子さんは、聞き取り困難を抱えている場合があります。また、テレビやYouTubeで字幕がないと疲れるという場合も、聞こえにくさがないか確認するといいでしょう。

聞こえにくさを放っておくと、コミュニケーション力が低下したり、自信をなくしたりする恐れがあります。早く気づいて必要な対応をしていただきたいです。また、「LiP/APDだからこれはやらない」と避けるのではなく、やりたいことをどうすればできるかを工夫しましょう。

(文:吉田渓、注記のない写真:Fast&Slow/PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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