聞こえているのに聞き取れない?聴覚検査は正常な「聞き取り困難症」の実態 聞き間違いは"天然キャラ"のせいじゃない
実は、LiD/APDは社会人になってから自覚する方が多く、外来で最も多いのは20代女性なのです。学生時代は先生の話が聞き取れなくても友達に聞けばいいし、聞き間違いが多くても 「天然だよね」で済みますが、就職するとそうはいきません。電話対応で聞き取りができない、上司の指示がうまく頭に入らないという状況に陥り、自信を失って適応障害になるケースもよく見られます。話を聞くと、「学生時代も聞こえていなかったが、適当に返事をしていた」「バイト時代も店長に怒られっぱなしだった」ということが多いのです。
──発達障害とLiD/APDには関連があるのでしょうか?
LiD/APDだから必ずしも発達障害、というわけではありません。私たちの研究では、LiD/APDで発達障害という診断がつく人は30〜40%でした。
ASDのお子さんの中には、医師に「ASDがあるから話を聞いていなくて当たり前」と言われ、耳鼻科を紹介してもらえなかったケースもあるようです。ASDで聞き取りに困難を抱えている人は多いですが、「ASDだから聞けていなくて当然」というわけではありません。その子が何に困っているのか、どんな状態なのかをきちんと調べる必要があります。
また、発達に凸凹はあるがASDの特性は満たしていない、という人もいます。凸凹は人によって異なり、脳のワーキングメモ
LiD/APDの疑いがある場合、まずは耳鼻科を受診
──LiD/APDかもしれないという場合、どこに相談すればいいですか?
まずは耳鼻科を受診しましょう。以前に比べ、耳鼻科の臨床医の間でLiP/APDの認知度は上がっており、「聴力検査に問題がないのでLiP/APDかもしれない」と判断できる医者は増えています。私の研究班では「LiD/APDの診断と支援の手引き(2024第一版)」を公表していますが、聴力検査で問題がなくて聞き取りにくさがある場合は、専門医の診察を受けることを勧めています。われわれのサイトで、LiD/APDの診断ができる医療機関一覧もまとめています。
──LiD/APDやその背景などはどう調べるのですか?
聞き取りにくさの陰に難聴や軽度の難聴が隠れている可能性もあるので、まずは聴力検査を行います。私が勤務する大阪公立大学附属病院では、聴力に問題がない場合、5歳から16歳11カ月の方はWISC検査、16歳以上の方はWAIS検査を受けてもらいます。これらの検査では、聞き取りに関連する「言語理解・知覚推理・ワーキングメモリ・処理速度」の処理能力や効率性を測ることができます。個別の項目に高い低いがあっても、全体の評価として「平均」と出ることがあるため、各項目を詳しく見たほうがいいのです。
──LiD/APDだとわかったら、具体的にどんな対応をするといいですか
そのお子さんの特性に合わせた補助機器を使います。補助機器には主に「音を大きく聞こえやすくする機器」と「雑音を防ぐ機器」があります。