時間外勤務が約半分に、守谷市の「週3日5時間授業×教科担任制×部活動改革」 支援人材も市費で積極採用して教員の負担軽減
市独自の「いじめ予防プログラム」を始めた狙いとは?
さらに、児童生徒の人権を守るとともに、教員の時間外勤務を減らすうえでも重要だとして守谷市が力を入れているのが、いじめ対策だ。
「いじめが生じると、児童生徒からの聞き取りや保護者とのやり取りなどに時間がかかり、教員の時間外勤務が増える傾向にあります。いじめが起きてから対応するのではなく、いじめを未然に防ぐプログラムの立ち上げが必要だと判断しました」
2024年度には、道徳の教科書などを参考に市独自のいじめ対策プログラムの教材を作成し、年4回のいじめ防止授業を行っていく。何がいじめなのかを伝え、いじめが起きたときに取るべき行動などについて考える機会を設けることで、いじめの発生を防ごうという狙いだ。
各学校では月1回「いじめ発見アンケート」を実施するとともに、いじめ対策会議を開催。個別対応が必要なケースでは、守谷市総合教育支援センターのいじめ対策指導員と連携しながら対応しているという。市で2名のスクールロイヤーを採用しており、教員は日常的なトラブルへの対処法について個別にメールで相談することもできる。
また、不登校の児童生徒の居場所として、校内フリースペース(校内適応指導教室)の設置を進めており、教員免許を持つ支援員を市費で配置。2024年度からは登校が難しい児童生徒の家庭訪問などを担う「守谷型SSW(スクールソーシャルワーカー)」を、中学校区に1人ずつ配置している。
市費採用のスクールスタッフとしては、このほかに小学1・2年生がスムーズに学校生活に適応していけるよう、「学習支援ティーチャー」を配置。2024年度は小学校には2クラスに1人の割合で計28人を配置して、低学年の児童が学校に慣れてきたら、学年を問わず、支援が必要なクラスに配置する柔軟な運用を行っている。
外国語学習に関しては、全小中学校にALT(外国語指導助手)を常任で雇用。また、1回25分のオンライン英会話を小学5・6年生では年3回、中学校では年5回取り入れており、教員が外部リソースを活用しながら指導できるよう配慮している。
さらに、各中学校区に1人、守谷市教委付けで2人のICT支援員を配置。ICT機器の接続作業やトラブル対応、児童生徒に向けた機器の扱い方の説明などは、教員に代わりICT支援員が担う体制を取っている。
現在、教員全員がGoogle AI「Gemini」を使えるようにしており、今年の夏休みには各学校の情報主任を対象に、外部のAIコンサルタントによるAI活用研修を行った。「保護者向け文書の雛型などをAIで作成できれば時短になる。授業はもちろん、校務におけるAIの有効活用も進め、よい事例を共有していきたい」と古橋氏は話す。
授業時数や部活動の時間などの見直しを進め、教員の業務で減らせる部分は確実に減らしていく。その一方で、外部リソースを積極的に活用し、教員の仕事を代わりに担う“味方”を増やしていく。この両方の施策をバランスよく実行していることが、守谷市の学校教育改革が成果を上げている理由だと言えそうだ。
(文:安永美穂、注記のない写真:IYO/PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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