グランドセイコーがロレックスを追撃できた理由 日本の職人技が世界最大のアメリカで高い支持

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名門ブランド限定の展示会に初出展

グランドセイコーはスイスのブランドコミュニティからも、ようやく認められる存在となってきた。

2022年には、アジアから唯一、世界最大の高級時計展示会「Watches and Wonders」に出展。この展示会はスイス・ジュネーブで毎年開催され、カルティエに代表されるリシュモングループを中心に名門ブランドが新作を発表する場として知られる。まさにグランドセイコーが世界の高級時計として認められたことを象徴する出来事だった。

毎年11月に開催される「時計界のアカデミー賞」と評されるジュネーブ時計グランプリでは、2024年度のメンズ部門でグランドセイコーがノミネートされている。

クリスマスを控える11月は1年で最大の商戦期でもある。セイコーの柴﨑氏は「4月の展示会に新製品を発表し、11月のコンクールで受賞というサイクルを確立することで、ブランド訴求を図る」と意気込む。

グランドセイコーは高度な職人技術への評価が高い(記者撮影)

アメリカでの成功を足がかりに、次に狙う市場は本丸の欧州だ。欧州はスイスの老舗ブランドが支配的であり、参入のハードルは非常に高い。こうした高級時計の世界では、ブランドの歴史や物語性が重要視される。

品質面では、セイコーは一貫して自社で時計を製造する「マニュファクチュール」としての強みがある。グランドセイコーはすべての製品が国内製造で、岩手県雫石町では機械式、長野県塩尻市ではクオーツ式とスプリングドライブが職人の手で組み立てられている。

特に、時計の心臓部であるムーブメントを部品から開発・設計できるメーカーは世界でも限られている。セイコーはその数少ない1社で、真のマニュファクチュールといえよう。長年培った技術力はスイス勢に対抗する武器となるだろう。

スマートフォンやスマートウォッチの普及により、腕時計が時刻を確認するための道具という役割は薄れつつある。むしろ時計は自己表現や情緒的な価値を持つアイテムとして再評価されている。

「SEIKO」ブランドは2024年に誕生から100周年を迎えたが、グランドセイコーはブランド再構築からまだ日が浅い。日本的な美意識や伝統的な職人技を世界が今後どう評価していくのか。伝統や物語性が重要になる高級ブランドを、日本で作り上げるのはまさに挑戦だろう。

山下 美沙 東洋経済 記者

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やました みさ / Misa Yamashita

精密・ロボット業界を担当。山梨県韮崎市出身。神戸大学経済学部を卒業。2024年、東洋経済新報社入社。スマート農業、工作機械にも関心。最近は都内の立ち食いそば店を開拓中。

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