成果がなかなか出ないことで、やはり焦りが出てきます。時間をかけた以上、もっと納得するものを出さないといけないとプレッシャーも出てきます。それがずるずる続いてしまったうえに、台湾政治も政権が変わるたびに大きな変化が起きてしまい、次の展開を見ないと本を書けないという状況も出てきて、あっという間に20年以上経ってしまいました。
ただ、結果的に四半世紀のスパンを見たことで台湾政治の底流をつかむことができ、それを『台湾総統選挙』(晃洋書房)にまとめ、このテーマの決定版となる成果を示せました。今年は、2024年の選挙を踏まえて中国語の増補版も出しましたが、5年前の初版から結論は変わっていません。結論を修正する必要がなかったのです。本質を示す成果を出せたことは研究者として誇りです。
新興民主主義がどうなるか見届けたい
――途中で台湾研究をあきらめようと思いませんでしたか。
それはなかったです。中国から民主主義をやめさせようと圧力があり、台湾自身も過去の権威主義体制で残された負の遺産を引きずっていましたが、その険しさの中でも民主主義を発展させようとしていました。この新興民主主義がどうなるか見届けたい、ここでやめたら研究者としての意味もなくなると思いました。
幸い2000年前後から徐々に台湾政治関連での学会報告や論文発表ができるようになりました。周囲からの目も「イギリス政治研究の小笠原」から「台湾政治研究の小笠原」に変わり、台湾の専門家として声をかけられるようになり、モチベーションは維持できました。
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