考えの整頓 佐藤雅彦著
不思議な魅力に満ちたエッセー集である。身の回りで起こった27の小話の多くに、誰もが思わずほくそ笑んでしまうのではないか。一見、不可解な二つのエピソードが「物語性」や「物の永続性」によってつながれ、料理されていく。それも著者の豊かな学殖がまぶされながら上品に。
たとえば、「『たくらみ』の共有」と題された巻頭の小話。見る気もなく見たある日のテレビの大河ドラマに引き付けられた理由と、中学時代の父兄参観で目を見張るほどの活気あるクラスにした先生の機智との結び付き。「敵か味方か」の小話では、いわば人生の一コマでわずかな時間を共有したにすぎない二人との時を経ての偶然の出会いによって、その記憶のありようから導き出される人間の「動物としてのさが」……。
NHK教育テレビ「ピタゴラスイッチ」や「2355/0655」を世に送り出す、著者一流の「思考のプロセス」に浸り切ることができる。
暮しの手帖社 1680円
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