世界の多くの国は、文化的、民族的、宗教的に多様だ。近年は日本でも、多様な人々を包摂する社会の実現について議論が盛んになっている。しかし現実的な問題として、マイノリティーの文化的アイデンティティーを維持することは、大きな困難を伴う。
歴史を振り返ると、世界各地のマイノリティーはマジョリティーへの同化を迫られたり、社会から排除されたりしてきた。民族・宗教が多様な社会では、民族・宗教間の対立が政治的不安定性や暴動の一要因にもなる。1990年代の文献では、多様性は国家の経済成長を阻む一因と見なされていた。
近年は多くの国が多様性を担保し、共存を目指すための政策を取っている。例えばスロベニアでは国会で少数民族への議席割り当てを行い、少数民族の権利を明示的に保護している。一方、こうした政策は、移民排斥を訴える極右政党の台頭や自民族の分離独立を目指す動きといった反発(バックラッシュ)を生むこともある。「社会の多様性と一体感の両立」は、世界各国における重要な政策課題だといえる。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け
無料会員登録はこちら
ログインはこちら