経産省→神山まるごと高専新校長、「未来の教室」元責任者が問う「学びの形」 五十棲浩二「学生が主体的に挑戦できる環境を」

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「経産省で企業や自治体、教育委員会などと仕事をしてきたほか、教員経験を含めて学校に7年勤務し、慶応SFCの大学院博士課程で研究する中でプログラミングやデータサイエンスなどにも触れてきました。こうした経験からさまざまな分野の方との共通言語を理解できる点も、多様なバックグラウンドを持つスタッフや学生と挑戦していくうえで生きるのではないかと思いました」(五十棲氏)

経産省の教育産業室長は任期付きの民間人採用であり、一定期間での経産省勤務の後には再び民間での活動も視野に入れていたため、数週間でオファーを受ける決断をした。家族も賛同し、単身赴任の形で9月初旬に神山町に移住。自然に恵まれた環境と、スタッフのエネルギーに満ちた空気感が印象的だという。

「すべてスタッフの皆さんがプロフェッショナルの立場から学校をつくろうとしています。官僚の仕事も面白かったですが、今のほうがより手触り感がありますね。自分たちで1つひとつプロジェクトをつくっていくことは、緊張感があるとともにワクワクします」(五十棲氏)

「やっていることは大きな意味では一緒」

これまでの日本の公教育は、平等・公平の観点から「揃える学び」に重点が置かれてきた。それは日本の教育のすばらしい価値の1つだが、その一方で、「伸ばす学び」のサポートも必要ではないかと五十棲氏はつねづね考えてきたという。

「やりたいことが明確な子がいた場合、それが100人中5~10人くらいの割合だと税金で支援するのは難しく、家庭でやってくださいというのが現状です。つまり、日本の教育には『公助』と『自助』しかありません。しかし、これからは価値創造人材の育成も必要です。そこを『共助』によって支援できないかと、経産省では『未来の教室』プロジェクトを進める中で実証事業を行うほか、研究会を設けてエコシステムづくりの検討にも力を入れてきました」(五十棲氏)

立場は変わったが、「その思いや、やっていることは大きな意味では一緒だ」と五十棲氏は言う。

「学費無償化の仕組みなどのように、神山まるごと高専でのさまざまな取り組みが好事例となって公教育に貢献できることもあるでしょうし、民間の立場から応援できることもたくさんあると考えています。教育は長い時間のかかる取り組みであり、必ずしも役職が大事なのではなく、やっている内容が大事。もちろん、これまでの取り組みにおいてできなかった部分や反省点もありますが、引き続き1つひとつの事例をつくっていきたいと思っています」(五十棲氏)

現在、神山まるごと高専は開校して2年目。今年度は、経営体制を強化する目的で、五十棲氏のほかにも新たなメンバーが移住して参画している。

鈴木敦子(すずき・あつこ)
神山まるごと高専 副校長/ディレクター(学生応援兼学務)
早稲田大学卒業後、NPO法人ETIC.立ち上げに参画。理事兼事務局長、人事会計総務、マネジメントサイクル、バックオフィス全般を担うとともに、プログラムのコーディネーターとして、多くの起業家を支援。2024年度より出向して現職

その1人が、今年4月に副校長に就任した鈴木敦子氏だ。

起業家型リーダーの育成を通じて社会の発展に寄与することを掲げるNPO法人ETIC.の立ち上げに携わり、約30年間、多くの起業家を支援してきた。

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