意外と多い「留年・中退」、大学選びを間違えないための進路指導のポイント 目の前の入試対策ばかりに捉われていると危険
以前なら進学しなかった層の若者たちも、現在は大学で学べます。多くの方が高等教育にアクセスできる社会になったというのは、基本的にはすばらしいことです。その一方で、上述した中退のような課題も静かに広がっています。
中退の理由は大学や学部により異なりますが、目立つのは進路選択でのミスマッチと、学力不足の2点です。さまざまな大学で中退者のデータを分析すると、1年前期の時点で単位がほぼ取得できていないなど、入学当初から問題が発生しているケースは非常に多いのです※。
とくに文系の学部では学びのミスマッチが目立ちます。経済学部では数学が必要と知らなった、経営学との違いをわかっていなかったなど、少し調べればわかるような単純なことを理解しないまま、進学しているケースも少なくありません。大学側の広報姿勢にも問題はあるのでしょう。
高校の先生方からも、進路指導に関する悩みをよく伺います。以下は、研修の場などでよく出るご意見です。
・大学進学希望者は増えたが、学びたいことが思い浮かばないという生徒も多い。
・保護者の影響力が年々強くなっている。本人ではなく保護者の意見で進学先が決まる。
・早く確実に進路を決めたいからと、指定校推薦枠から選ぼうとする生徒や保護者が増えた。
・3年生の最後まで勉強に集中してほしいが、年内入試で合格を得た生徒から遊びだす。
いずれも、生徒や保護者が「入試での合格が勉強のゴールだ」と考えているから生じる問題であるように思います。裏を返せば、「入試での合格はゴールではなくスタートである」という事実を伝えることは、これらを解決するうえで大切ではないでしょうか。中退率などのデータも、ときには有効と思います。
文科省「令和5年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」によると、私立大学入学者のうち一般選抜での進学者は39.7%。これに対して学校推薦型選抜は41.4%です。大学入試のあり方も変わりました。
これが悪いとは言いませんが、勉強をし続けなくても早くに進路を決められる手段として指定校推薦枠が使われるケースがあるのだとしたら心配です。入試を通過することはできても、進学後につまずく可能性が高いでしょう。