「若手教師に寄り添う」のがうまい中堅教員は何が違うか、実践に学ぶヒント 即「ジャッジを下す」はNG、共に悩み乗り越えて
そもそも、「子どもに反抗される」「反抗されたらどうするか」という発想自体が、古い世代の発想です。子どもの反抗的な態度を対立的に捉えるのではなく、「何かに困っている子どもだ」と捉え、伴走するための手立てを考えていくことが大切です。
まずは「実態を把握する」という意味でも、相談を受けたらすぐに教室へ足を運びたいものです。実態を把握できたら、該当する子どもを呼んで、「実は廊下を通りがかったときに君の声が聞こえたから、気になって様子を見ていたんだ。何か困っているのかな?」「どうしたいと思っているの?」などと話を聞いてみるのもよいでしょう。
大切なのは教員一人ひとりの個性を生かしつつ、若手さんの特性に合った対策、子どもとの関わり方を一緒に考えていけるようにすることではないでしょうか。
例えば、現場の先生方に「生活指導って何ですか?」と聞いたら、おそらくその答えは人によってまちまちでしょう。
「生活指導」の定義は、学習指導要領に明記されているわけではありません。そのため、少なくとも中学校の現場では「生活指導」という名の下に、形骸化した校則を守らせたり、何のために行うのかよくわからない活動を行わせたりするといった現状も見受けられます。
考えるべきは、「何のために」指導をするのか、課題は? 目的は? どんな子どもを育てたいのか。そのために、子どもにどんな「手段」や「支援」が必要だったのか。
特に初任者の場合には子どもとの信頼関係が浅いため、頭ごなしに叱ったり、闇雲に褒めたりしていては逆効果になることもあります。そうならないようにするには、子ども理解から始めていくことが大切です。
私は、かつての自分への反省の意味も込めて、若手さんには、安易に「叱り方」だけを真似して、信頼を失ってしまうような教員にはなってもらいたくないと思っています。
何より、ミドルリーダーは裁判官であってはならないと考えています。保護者からクレームが来たときもそうです。若手さんに対してやってはいけないのは、即座に「ジャッジを下す」ことです。
かといって「この保護者、最悪だね」とか「悪いのは子どもだから」などと言うのもよろしくありません。課題が解決しないばかりか、若手さんの成長を阻害してしまうからです。
では、具体的にどうすればよいのでしょうか。まずは保護者は最終的に何を望んでいるのか、教員側は何を望んでいるのか、お互いの最終的なゴール地点を探っていくこと。次に必要なのは、「事実と解釈を分ける」ことです。
クレーム対応をする際、「事実」は誠実に受け止める。それに対して、個人の「解釈」については、あまり重く受け止めすぎないようにする。そのほうが心身の健康のためによいと思われます。
ゴール地点と課題解決の手段が明確になったら、あとはやはり「チームで対応」です。管理職や他の教員とも連携を図ります。ミドルさんは周囲の教員や保護者に、若手さんも「目的に向かって改善しようと努力している」ことを伝えていきます。無事、騒動が収まって落ち着いたら、若手さんと一緒に冷静に振り返りをしてみましょう。
2〜3年目の若手さんへの寄り添い方

2年目の研究授業、何をすればいいの?と悩んでいる若手さんもいるかもしれません。
校内研究などの場合には、あらかじめ研究主題が設定されていますが、それとは別に個人の目標を決めておくようにします。研究授業の成功の秘訣は、目標を「たった一つだけ」に絞ることです。そうするだけで授業を組み立てやすくなり、研究発表後のフィードバックも受けやすくなります。
2~3年目の研究授業は、「新しい授業スタイルの提案」というよりも、「若手教員の授業力向上」を重視している場合が多いものです。そのため、「新しさ」や「カッコよさ」を意識する必要はありません。ミドルさんから「シンプル・イズ・ザ・ベストだよ。自分の授業の課題と向き合えれば、それでいいんだから」と伝えてあげるとよいでしょう。