「パネル」を使用した半導体製造技術は10年ほど前から議論されている。2017年にサンフランシスコで開催されたセミコンウェストで、業界団体のSEMIが主催したセミナーではパネルサイズの議論が行われた。
その時点では20種類を超えるパネルサイズが各社で検討されており、懸念の声が広がった。というのも液晶パネル製造ではガラスパネルサイズの標準化が後手に回った影響が後々出てきたからだ。問題を繰り返さないため、SEMIは半導体向けパネルの標準化を行い、2019年にSEMI 3D20として、「510mmx515mm」と「600mmx600mm」の2種類のパネルサイズなどを規定したスタンダードが出版された。
現時点ではアメリカのインテルや台湾のASE(日月光)、台湾PTI(パワーテック)など、パッケージングを手がけるほぼ全ての会社がこのいずれかのパネルサイズを選択している。業界標準化がぎりぎり間に合ったケースである。
日本企業主導の標準化ができた珍しいケース
実は、これらの「パネル」を収納するFOUPの業界標準化が日本のサプライヤー主導で行われたことはあまり知られていない。図4として示したパネルFOUPは300mm用密閉容器で大きなシェアを持つ信越ポリマーと、同じく300mm用密閉容器の開閉ユニット(ロードポート)製造の最大手であるTDKが初期コンセプトを策定し、アメリカ大手ユーザーを巻き込んで標準化したと筆者は聞いている。
標準化された仕様内容を見る限り、開発途中で頓挫した450mmウェーハ用の密閉容器/開閉ユニットの仕様をベースにしている。知財権の問題をクリアし、開発期間の短縮を図ったものと見受けられる。
日本の会社が主導した業界標準が世界で広く使われているケースはそれほど多くない。技術動向を的確に掴み、ユーザーを巻き込んだ取り組みが日本側にもできた珍しいケースと思われる。また、今回SEMIスタンダードの資料を検索している際、今年5月に公表されたインテル、オムロン、信越ポリマーなどが組合員である半導体後工程自動化・標準化技術研究組合 (SATAS)に関係している思われる標準化案もあり、このパネルFOUPがベースになっているようだ。
今年のセミコンウェストを見ると台湾企業などがSEMIスタンダードに準拠したパネルFOUP関連製品群を展示しており、これらのスタンダード化を牽引してきた会社がデファクトを維持できるかどうかは企業努力にかかっているだろう。
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