「日銀利上げ」の確率を過小評価すべきではない 「高圧経済」完全脱却を市場に納得させられるか

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FRBの政策正常化の順序は、①まず利上げを先行、②ネットの国債買い入れ額を減額(テーパリング)、③国債買い入れ額を全額再投資レベルに削減(残高一定)、④残高削減(QT)の順番を踏んでいる。

そして、QTについては残高削減のプランを事前に示している。市場環境によってペースの調整はありうるが(実際、今年6月から削減ペースが減速された)、あくまでも金融政策スタンスは政策金利の調整で示し、QTは極力機械的に実施する「オートパイロット(自動運転)」である点を強調している。

FRBと同じアプローチを取りたい日銀

日銀も「短期金利の操作を今後の主たる政策手段とする」と明言している以上、FRBと同様の「オートパイロット」アプローチを採用したいはずである。実は現在の月間6兆円の買い入れはほぼ月間の償還額と見合っており、日銀はすでに③のフェーズにいる。

したがって、減額は④のQTの開始を意味するが、FRBの例にならえば「8月から半年間は月間4兆円、その後半年ごとに0.5兆円ずつ買い入れ額を減額する。これまで同様、買い入れ額にはある程度の幅を持たせ柔軟性を確保する。金利が大きく変動する場合は機動的な買い入れを行う。2年経過後については市場環境を踏まえて改めて計画を公表する」といったプランが考えられる。

これを機に買い入れ額ではなくFRB流に保有残高の削減幅をターゲットとすることも考えられる。具体的には「8月から半年間は国債保有残高が月間で2兆円減少するように再投資を行い、その後半年ごとに0.5兆円ずつ減額幅を増やしていく」といった具合である。このほうが政策正常化をより明快に印象付け、円安抑止には役立つだろう。

下田 知行 政策ストラテジスト・立教大学経済学部特任教授

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しもだ ともゆき / Tomoyuki Shimoda

1989年東京大学法学部卒業後、日本銀行入行。国際決済銀行(BIS)派遣、信用機構室調査役、金融市場局企画役、金融機構局国際担当総括(現・国際課長)を経て、国際通貨基金(IMF)日本代表理事代理。帰国後、松山支店長、企画局審議役、一橋大学国際・公共政策大学院特任教授などを経て、2024年4月から現職。異次元金融緩和の政策コミュニケーションを統括し、海外中銀・国際機関との政策調整や主要ヘッジファンドなど市場との対話を強化したほか、グローバル金融危機ではバーゼル3交渉を統括する。最近は中央銀行デジタル通貨(CBDC)などデジタルアセットや脱炭素の地域戦略、地銀の成長モデルなどの研究を行っている。

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