「男性養護教諭」はなぜ少ない?問題は性別でなく「選択肢がない点」の理由 "ケア職=女性"の社会的観念が採用にも影響
「実際に、男性の養護教諭を取らないと噂されている自治体はありますね。一方でふたを開けてみると、柔和な印象の女性の養護教諭が『それで生徒指導ができるのか』と言われるなど、イメージ先行の圧迫面接と思われる体験をする人は性別に関係なく存在するようです」(津馬氏)
そもそも現状では、養護教諭を目指す男性の母数が少ないのも事実だ。志願者を増やすために津馬氏は、「キャリアモデルを示したり、『ケア職は女性』という社会的イメージの払拭が必要」と語る。
「理想は、一般の先生も養護教諭的な物事の見方や関わり方ができるようになることです。学力・体力の向上、自己実現などすべての土台には心身の健康があるはずです。多くの先生は学校保健安全法の内容に詳しくありませんが、この知識や技能は教員全員が持っていても悪くないはずです」(津馬氏)

学校の保健がすべて養護教諭の肩にかかる業務過多も課題だが、実は複数配置も一長一短なのだという。実習段階では単数配置を前提にするため、現場での役割分担に難しさがあったり、毎年相手が変わる場合の煩わしさもあるからだ。
長野氏や津馬氏も所属する「男性養護教諭友の会」では、男性養護教諭への認知と理解の輪を広げる研修会を開催するほか、ホームページや書籍などを通した積極的な発信を行っている。管理職をはじめ、どうしても男性養護教諭への戸惑いが残る人がいることは事実だ。

長野氏は、「前例がないなど、学校が慎重にならざるをえない事情も理解できます。だからこそ、今こうして養護教諭として働くことができている私たちが、個々や『男性養護教諭友の会』の活動を通して草の根で活動を続けなくては」と語る。
彼らの言動は、養護教諭の力量は性別によるものではなく、1人1人が専門職として力を発揮できているかどうかであるということを強く伝えている。
(文:長尾康子、編集部 田堂友香子、写真:長野氏提供)
東洋経済education × ICT編集部
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