「帰国子女」は日本の小学校に適応できるか?受け入れ先の学校対応、現状と課題 毎年約6000人の小学生が帰国、現地教育が7割
また、国際理解教育においては外国籍の子どものケアがより重視されるようになり、帰国子女に特化せず、多様な国の文化を尊重し、お互いの理解を促進するような指導にシフトする傾向が見られます」(菅原氏)
特に小学生の場合は、データからもわかるように一般の公立小学校へ編入させる保護者も多い。帰国子女を特別視する動きは、よくも悪くも“鈍化”していそうだ。
子どもたちと密なコミュニケーションとフォローを
帰国子女が直面する課題として、先に挙げた国語力不足や文化の違いはわかりやすい例だが、本質的な問題はそれらから派生する「自尊感情の喪失」であると菅原氏は言う。
「言葉や漢字に苦手意識があり、授業についていけない。日本の学校文化になじめず、学業に積極的になれない……。こうした状況から、帰国子女は自信を失ったり、いきいきと過ごせなくなってしまったりといった弊害が起こります。
そうならないために、保護者は学校の先生とのコミュニケーションをぜひ密に行っていただきたいと思います。特に低学年の場合は、子ども自身が『自分が何に困っているのか』をうまく言語化できないことも少なくありません」
例えば、編入前には学校側との面談がある。そこで子どもがどのように海外で過ごしたのか、得意なことや好きなこと、どのような気質か。様々な情報をシェアし、連絡をとりやすい状態を作っておくことがカギとなる。
「日本語力に不安がある場合は、日本語のフォローアップをしてもらえる学校を選ぶ、英語力を伸ばしたい場合は習熟度別の英語指導を行っている学校を選ぶ、など、お子さん1人ひとりに合わせた学校選びは必須で、JOESでもアドバイスを行っています。
受け入れる学校側でも、その子がいた国がどのような文化なのか、どのようなところで学んできたのかを積極的にキャッチアップしてあげるような取り組みがなされれば、帰国生にとってより安心できる学びの場所になっていくのではないでしょうか」(菅原氏)
以前から政府による教員の在外教育施設への派遣事業が行われている。教員自身が海外生活を経験することで、帰国子女の悩みや困難に寄り添えるようにするのもその狙いの1つだ。
海外から帰国する子どもたちは、言語や文化の違いにぶつかりながらもたくましく成長してゆく。世界へと羽ばたいてゆく、将来への大きな可能性を秘めた子どもたちの力を育てる大人にもまた、求められる力がありそうだ。
(文:藤堂真衣、注記のない写真:ふじよ / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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