「帰国子女」は日本の小学校に適応できるか?受け入れ先の学校対応、現状と課題 毎年約6000人の小学生が帰国、現地教育が7割

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日本語の授業についていけず、進路が狭まることも

帰国子女たちは、日本の小学校でどのような問題に直面するのだろうか。思い浮かびやすいのは言語や文化の壁だ。

菅原光章(すがはら・みつあき)
公益財団法人 海外子女教育振興財団 教育アドバイザー
奈良県の公立小学校で教諭、教頭、校長として勤務。1983年より3年間台北日本人学校へ赴任し、現地で海外子女の教育に従事したほか、同志社国際学院初等部で教育サポーターとして勤務する。奈良県国際理解教育研究会事務局長、副会長、会長を歴任。2016年より海外子女教育振興財団(JOES)にて教育アドバイザーに携わり、海外赴任を控えた保護者や、帰国後の教育に悩む保護者などからの相談にあたっている
(写真は本人提供)

「現地校やインター校で過ごした子どもたちは、現地の言葉や文化に慣れています。日本語よりも現地の言語のほうが使いやすいということも少なくなく、日本語の教科書が読めず授業についていけない、ハイレベルな内容を理解できないリスクが上がります。国内で受験対策をしてきた子どもたちとは互角に戦えず、進学の選択肢が狭まってしまいます」(菅原氏)

また、現地の文化に慣れていることで日本の学校文化になじめないことも考えられる。海外では自分の意見をきちんと発信できることに評価がなされることが多いため、授業でも積極的に挙手をして意見を発表する児童が多い。一方、日本では年齢が上がるにつれて挙手をする子どもが少なくなり、積極的な子どもは“浮いた存在”になってしまうこともある。

こうした問題を防止するために、先に述べた研究指定校や国際教育に注力する学校では帰国子女のための指導方法を考案・実践してきた。例えば課外授業として日本語の補習授業を行うなど、帰国子女のみで構成される「帰国子女学級」を設ける学校や、英語による教育の比率を高めている学校もある。

その一方で、こうした帰国子女の受け入れ体制の拡充は停滞しているともいう。

「多くの企業が海外進出するにつれ、保護者の海外赴任に同行する子どもも増えました。以前ほど帰国子女が特殊な存在ではなくなったわけです。

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