学習障害の息子が慶応に合格、母が直面した「合理的配慮」をめぐる過酷な現実 困難な学ぶ機会の確保、心が折れる当事者たち

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KIKUTAでは、LD当事者の大学生がスタッフとして子どもたちをサポート。大学生は人の役に立てることを体験し、子どもたちは自分に合った学びのスキルを得ながら大学生の姿に将来の希望を見出す場になっているという

こうした活動を通じて、全国のLD当事者とその保護者の相談に乗ってきた史子さんだが、「今もLDの子どもを取り巻く環境は厳しい」と感じている。そのうえで、当事者が合理的配慮を学校で受けるために必要なことについて、次のように話す。

「保護者も学校に丸投げしないこと。まずは本人の心が育っていることが重要で、書けないことを引け目に思っているうちは、戦うことはできません。本人が自分の特性を前向きに捉えたうえで、『どんな方法なら自分の実力を出し切れるか』を自分で説明できるようになることが大切。読み上げてもらうのがいいのか、読み上げでも機械と人のどちらがいいのか、どんな方法で書くのか──自分に合った方法で時間内に書き上げる調整や積み重ねも大事です。高校入試を考えると、中3の1学期までにはこれらを確立し、支援計画書に盛り込んでもらうのがよいでしょう」

普段の定期テストや受験でのパソコン使用の許可を取りつけるには、学校との連携も欠かせない。

「有祐も小学校でのiPadの使用実績を持って中学校に交渉し、中学校の定期テストのパソコン使用実績を持って高校に交渉しました。学校と一緒にその子なりのやり方を確立して実績をつくっていくことが大切です。また、受験当日のパソコン使用を許可してくださいと親が志望校にお願いすると、点数交渉をしにきたと思われるようです。ですから、親が前に出るのではなく、学校の先生に窓口になっていただき、志望校と交渉してもらうことも重要です」

一部の自治体や学校では支援や配慮を必要とする子どもたちへの理解が進みつつあるが、LDやディスレクシア自体の認知度はまだ高くない。そのため、学校との連携に当たっては、まずは知ってもらう必要があるという。

「チームをつくるような意識が重要で、仲間や味方を作っておくといいですね。私は積極的にPTA役員を引き受けました。その際、先生にわが子のことをお願いするのではなく、まずは先生や学校のお手伝いをして気持ちのよい人間関係を築くことを大切にしました」

早めの支援で「学力を積み上げる」重要性

また、LDは早い段階で気づいて支援につなげることが大切だと史子さんは言う。低学年で気づいても「様子を見ましょう」と言われ、そのまま時間が過ぎていくことがよくあるからだ。

「今の社会や学校はすべて文字言語がベースになっていますから、考える力があっても読み書きができないとわからないことが増え、小学校の高学年にもなるとかなり苦しい状況に置かれます。聴覚を通じた理解力はかなり高いのに、学力の積み上げができていないことで、WISKなどの知能検査では知的障害領域と判断されてしまう子も。そのため、早い段階からICTを活用して学ぶ力を身に付けさせてあげることが非常に大切になります」

適切な支援や合理的配慮が受けられずに学力の積み上げができないと、「自分はできない子なのだ」と心に傷がついてしまう。それが最も問題だと史子さんは指摘する。

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