シチズン「史上最も売れた」時計はなぜ生まれたか モノ作り面だけでない新たなヒットの要素も

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シチズンの調査によると、「“TSUYOSA” Collection」は若年層に人気がある。アメリカでは10代後半~30代前半の購入割合が、シチズンの他のブランドに比べ2倍以上の水準に達する。「今までシチズンは実用的で、少し無味無臭なイメージを持つお客様も多かったかもしれない。TSUYOSAのヒットはそうしたイメージを変えるきっかけになる」と平松氏は語る。

海外向け商品の開発責任者・平松恭典氏は、「20年勤めてきて、ここまで売れた時計は見たことがない」と語る(記者撮影)

シチズンはアメリカなど海外での販売に強みを持つ時計メーカーだ。2008年に買収したアメリカのメーカー「ブローバ」や自社製の「プロマスター」などをグローバル展開、ブランドごとに市場に浸透させてきた。その中で課題だったのが、そもそもの「シチズン」ブランドをいかに浸透させていくかだった。

今回のヒットが「シチズン」ブランドの認知向上につながったことは間違いない。新たな販路も獲得しており、今後は「“TSUYOSA” Collection」を入り口に、独自電波時計技術の「エコ・ドライブ」を搭載した腕時計などの販売につなげる戦略を打ち出す。

ヒット商品をブランドの柱にして成長

平松氏は、「単純にお金をかけて宣伝をするだけではなく、いかにコレクターに響くものを作れるかが大事。ブランドが意図して大ヒットを生み出すことは難しいが、今後もトレンドを捉えた時計作りを続けていく」と意気込む。

アメリカでのシチズンの売り場。“TSUYOSA” Collectionをきっかけにブランドの認知が向上した(写真:シチズン時計)

2023年にはPANTONE社とコラボしたアジア限定モデルを発売。文字盤の目盛りに改良を加えるなどアップデートを重ねながら、ラインナップの拡充を進めている。

今後も新製品を投入、最新のトレンドを追求することで、息の長いブランドになるよう育てていく方針だ。グローバル戦略を成長の要に掲げるシチズンにとって、「“TSUYOSA” Collection」が海外市場を切り開く先鋒の役割を果たすことになりそうだ。

山下 美沙 東洋経済 記者

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やました みさ / Misa Yamashita

精密・ロボット業界を担当。山梨県韮崎市出身。神戸大学経済学部を卒業。2024年、東洋経済新報社入社。スマート農業、工作機械にも関心。最近は都内の立ち食いそば店を開拓中。

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