長野県が全国初「フリースクール認証制度」、こだわった当事者性と納得解 学校の魅力化→学習環境の魅力化で不登校支援

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「対話を進めるうちにそれぞれの『当たり前や正解』が崩れていきました。例えば、学校の先生は善意から不登校ぎみのお子さんに積極的にコミュニケーションを取ろうとしますが、当事者に聞くとそれが嫌だったという人もいれば、ありがたかったという人も。そうやってお互いに意見を表明し、ボタンのかけ違いや困り事が明らかになり、唯一の解はないことがわかってくると、徐々に子どもを中心として物事を捉えることができるようになるんですよね。とくに今は誰かが正しい答えを持っている時代ではないからこそ、みんなで納得解を作っていくことが大切だと思っていますが、まさにこういうことなんだと私自身も学ばせていただきました」

認証制度の大きなテーマは「関係の再構築」

対話を重ねて納得解を作り出す姿勢は、運用が始まってからも変わらない。現在、県は有識者などで構成される認証懇談会構成員と共に、認証申請のあったフリースクールを1つひとつ訪問して現地確認を行っている。荒井氏もその構成員として、1カ月の間に申請のあった約30件をすべて訪問したという。

荒井英治郎(あらい・えいじろう)
信州大学教職支援センター 准教授
東京大学大学院教育学研究科を経て、2016年から現職。同年4月から信州大学教職支援センター地域連携部門長。専門分野は、教育行政学、教育法学、教育経営学。過去・現在の教育政策のメカニズムを分析し、未来の制度をデザインしていくための研究のほか、教育委員会や学校改革の伴走支援を行っている。主な社会活動として、信州学び円卓会議・座長、長野県働き方改革検討委員会・座長、信州型フリースクール認証制度検討会議・座長、長野県不登校児童生徒等の学びの継続支援に関する懇談会・座長、松本市教育顧問など
(写真:本人提供)

「フリースクールの現地確認を行う際は、運営者の方に認証制度への意見や、学校との関係に関する困り感についてもお伺いしているのですが、この時間が絡み合った糸を丁寧に解く機会になっています」

学校とフリースクール、行政の連携を促すため、今年度から2名の「不登校支援機関連携推進員」も配置した。

「必要なのは、フリースクールが学校や行政とコミュニケーションを取りたい時に情報共有を手助けする仕組み。そこをつなぐキーパーソンであり、現地確認の際にも同席してもらっています。管理職経験があったり、特別支援に造詣が深かったりと、学校、フリースクール、行政の3者の困り感を共感的に理解されている方が担当されており、課題解決に向けて丁寧に対話を行っていただけることを期待しています」

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