ソニー、巨額調達に飛び交う「2つの憶測」 会社側はセンサー事業の拡大に充てると説明

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ソニーは、2010年に月産2.5万枚だったセンサーの生産能力を、2016年には同8.7万枚まで引き上げる見通しだ。それでも不足感が残るほど、センサーの引き合いは次第に強まっている。

とはいえ、工場を新設するわけでもないのに4400億円という調達額は多いのではないか、と見る向きも少なくない。株式市場でささやかれるのは2つのシナリオだ。

シャープから事業買収?

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ソニー製センサーはハイエンドのスマホ向けで独り勝ちの状態

1つは買収である。ソニー製センサーは現在、シャープがほかの部品とともにカメラモジュールへと組み立て、スマホメーカーに出荷している。今後車載向けなど新分野を開拓するには、センサー単品でなく、モジュールでの提案が必要になる。

シャープとしても経営危機下で、事業の選択と集中が避けられない。そのため「ソニーがシャープのカメラモジュール事業を買収するのではないか」との見方が浮上している。

もう1つがソニーフィナンシャルだ。同社は金融事業を手掛ける上場子会社で、出資比率が60%のため、連結決算では少数株主持ち分利益が純利益から差し引かれる。

仮に完全子会社化した場合、その流出がなくなるほか、「実効税率が下がるメリットもあり、合計で数百億円規模の純益押し上げ効果がある」(前出の市場関係者)。そうなると、ソニーが中期経営計画で掲げる、自己資本利益率(ROE)10%達成にも近づく。

ソニーは今年度からの中期計画で、センサーなどデバイス分野を「成長牽引領域」に位置づけたが、金融事業の位置づけは明確にしなかった。どこで収益の地盤固めをするのか。巨額調達の使途が行く末を左右しそうだ。

「週刊東洋経済」2015年7月18日号<13日発売>「核心リポート03」を転載)

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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