作家も悲鳴、KADOKAWA「サイバー攻撃」の深刻度 ニコ動は復旧に1カ月、損失はどこまで膨らむ?
長期にわたるサービス停止に伴い、その間に見込んでいた広告収益が失われるうえ、ドワンゴは6月と7月のプレミアム会員の月額会員料や、ニコニコチャンネルの運営者への収益分配などを補償するという。月額790円のプレミアム会員は2024年3月末時点で117万人いる。システム再構築にかかる費用を含めると、一定規模の損失計上が避けられないだろう。
ただしKADOKAWAにとっては、ニコニコを中心としたWebサービス事業の売上高はグループ全体の1割に満たない。今回の被害が深刻と言えるのは、攻撃されたデータセンター内のほかのサーバーもすべて使用できなくなったことで、グループ売上高の半分以上を占める出版・IP創出事業にも影響が及んでいるためだ。
KADOKAWAは書店専用の直接発注システムや自社のデジタル製造工場を有しており、現在それらは一時的に稼働を停止している。書店側は、在庫を抱える日販やトーハンといった取次に発注しているが、在庫のない既刊商品についての取次からKADOKAWAへの注文に関しては、数量や種類を限定しアナログで対応している状況だ。
また、現時点では新刊の配本については通常の運用を維持しているものの、国内の紙書籍や電子書籍の編集・制作支援システムも一部停止していることから、今後は一部の新刊の刊行や重版制作が遅延することが見込まれるという。
停止が長引くほど現場の混乱も拡大
出版事業において、どれだけの損失が発生するかは現時点では不透明だ。ただ、システムの停止が長引くほど、書店での欠品による機会損失は膨らみ、制作現場の混乱も拡大する。
SNS上では「サイバー攻撃で特設サイトが閲覧できない」「発売1週間が勝負と言われており、私達には死活問題」などと、直近で新刊の発売を予定している作家から売り上げへの影響を懸念する声が相次いでいる。今後、こうした作家への補償が発生する可能性もある。
攻撃を受けたデータセンターには経理システムも含まれていたことから、一部の取引先に対して支払いの遅延が生じる可能性も見込まれるという。KADOKAWAは、経理機能と出版事業の製造・物流機能の正常化を最優先の取り組み事項として位置づけ、6月末をメドに復旧を目指している。
折しもきょう午後には、「ところざわサクラタウン」(埼玉県所沢市)で定時株主総会が開かれる。KADOKAWA株の6月17日終値は2851.5円と、サイバー攻撃を受ける前の6月7日終値(3365円)から約15.2%下落している。
KADOKAWAは、サイバー攻撃による2025年3月期業績への影響は現時点で不明としているが、この点に対する株主の不安は当然大きいだろう。経営陣の口から具体的な説明があるのか、多くのステークホルダーの注目が集まる。
KADOKAWAの株価・業績 は「四季報オンライン」で
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら