山形県「新採は1人で担任持たず」の体制で精神疾患による休職者・退職者ゼロ 2年目教員の不安解消や切れ目ない支援が課題

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「現在は、中学校の約3割で休日は学校が部活動を行わない体制を組めている。これをほぼすべての中学校に普及させていけるように、今後も地域移行を進めていきたい」と県教委担当者は話す。

ICTの有効活用も進めており、県立高校の一部の学校で先行導入していたデジタル採点サービスを2023年度には35校まで拡大。2024年度はさらに4校への導入を予定しており、「ほぼすべての県立高校に導入できる見通し」(県教委担当者)だ。点数の集計やデータ化ができるようになったことでミスが減り、採点作業を勤務時間内に終えられる教員が増え、「こんなに効果があるのかと驚いている」と県教委は言う。

また、2018年度より導入を始めた教員業務支援員(スクール・サポート・スタッフ)を、2024年度は小・中・特別支援学校の全校に配置を進めている。教員業務支援員は教員免許を所有していない人材でも任用可能で、印刷作業や給食指導などのサポートを担っている。

これらの取り組みはいずれも段階的に進められており、2022年度上期と2023年度上期の月平均時間外在校等時間を比較すると、小学校は37時間から36時間10分、中学校は47時間56分から44時間39分、高校は44時間26分から42時間33分、特別支援学校は24時間30分から23時間42分へと、いずれも減少している。

時間外在校等時間が80時間を超えた教員数は、2023年度上期の時点では小学校が4人、中学校が65人、高校が142人。目標の0人までは道半ばだが、中学校では最多だった2021年度上期と比べ約56%減となった。「部活指導や生活指導で忙しい中学校教員の時間外在校等時間を減らすことは容易ではないが、働き方改革の成果が数字に表れ始めたと捉えている」と県教委担当者は話す。

「教頭マネジメント支援員」や「スクールロイヤー」も配置

2024年度から始めた取り組みとしては、教頭マネジメント支援員やスクールロイヤーを新たに配置。教頭マネジメント支援員は、規模の大きな小・中学校10校に配置し、教頭に集中しがちな事務作業をサポートできるようにした。スクールロイヤーは弁護士を県として委嘱し、県立学校だけでなく市町村立学校も含めて各校から要請があれば相談できる体制を取っている。相談内容は教育課程に関すること全般を対象とし、児童・生徒の問題行動への対応や保護者対応についても相談が可能だという。

また、教員確保のために、介護や子育てなどで離職した教員経験者を対象とする「元職教員特別選考」も行っている。2024年度採用より応募条件を緩和し、正教員経験を「山形県で3年以上」から「山形県またはほかの都道府県で3年以上」、退職後の年数を「5年以内」から「制限なし」にしたところ、0人だった応募者が16人まで増加したという。

さまざまな形で教員の負担軽減に取り組む山形県。県教委担当者は「教職員のワークライフバランスを実現し、職場環境を整えることで、より充実した教育活動を行えるようにしていきたい。そして、生き生きと働く教員の姿を見せることを通じて、教職の魅力を若い世代にも知ってもらいたい」と語る。

(文:安永美穂、注記のない写真:ふじよ/PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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