山形県「新採は1人で担任持たず」の体制で精神疾患による休職者・退職者ゼロ 2年目教員の不安解消や切れ目ない支援が課題
「守りながら育てる」、2年目以降の支援が課題
とはいえ総じて満足度は高く、2023年度から現在に至るまで、大卒の新採教員の精神疾患による特別休暇取得者・退職者はゼロの状態が続いている。「若手の精神疾患が増加傾向にあった中、これは大きな成果だと捉えている」と県教委担当者は言う。
現場の教員からは「今までの新採教員よりは退勤時間が早くなった」との声もある。2024年度採用(2023年度実施)の教員選考試験では、新採教員の負担軽減の取り組みを知り、他県から受験した人もいたそうだ。また、この取り組みがどれだけ影響を与えたかはわからないが、2025年度採用(2024年度実施)の教員選考試験の志願者数(小学校)は、昨年度の236名から37名増えて273名となった。
しかし、新採教員の育成を手厚くすると、ほかの教員の負担が増大するのではないか。県教委はそうした事態を避けるため、2024年度から予算を増やし、週20時間までとしていた非常勤講師の勤務時間を週30時間へと拡大。非常勤講師が新採教員のサポートだけでなく、ほかの学年・学級の授業も担当できるようにした。
支援員の確保に向けては、専科加配の活用で不足する分は退職者に声をかけるほか、ペーパーティーチャー向けの説明会を実施して教員免許所有者の掘り起こしも行っている。「フルタイム勤務は厳しいが、非常勤としてなら勤務ができるとおっしゃる方は少なくない」と県教委担当者は話す。その結果、2024年度は支援員82名のうち、80名は再任用短時間勤務職員や非常勤講師などの教員免許保有者を確保できた。残り2名は教員免許を持たない会計年度任用職員だが、事務などのサポートを行う形で新採教員の負担軽減につなげているという。
県教委は2024年度、新採教員を「守りながら育てる」意識の浸透をさらに図るため、事業概要や校内体制の工夫例などをまとめたリーフレットを作成して各学校に配布している。また、「2年目の育ちを丁寧に見ていかなければいけない」(県教委担当者)との考えから、2年目教員のサポート体制を検討していくに当たり、本人や現場の様子を知るために学校訪問を実施している。
「ある2年目教員は、1年目に教科担任兼学級副担任として過ごす中でさまざまな教員の授業を見学して気づいた点をノートにまとめていました。その教員は、単独で学級担任を持つようになった今年度は、周りの先生方に教えてもらいながらも、そのノートを生かして授業や学級経営を行っていると話しています。今後は2年目教員の不安を解消するための好事例などを県内で共有するとともに、研修を担当する教育センターとも連携しながら2~3年目の研修体制を充実させ、切れ目のない支援体制を確立していきたいと考えています」(県教委担当者)
部活動の地域移行、ICT活用、外部人材活用も推進
県教委では2019年度に「公立学校における働き方改革プラン(Ⅰ期)」を策定し、教員の働き方改革を推進してきた。現在は第Ⅱ期(2023~2025年度)が進行中で、当初の目標値に届かなかった第1期の反省を受けて、「半期における時間外在校等時間の月平均が80時間を超える教員数0人」「年間における時間外在校等時間の月平均が45時間を超える教員数0人」を目指し、新採教員の支援に留まらず、多角的な取り組みを進めている。
例えば、「中・高の教員の時間外勤務が増える主な要因は部活動」という調査結果から、休日の部活動に関しては2023年度より地域移行を推進。2024年度は県内全35市町村のうち23の市町村で、地域移行の各調整を担うコーディネーターを配置し、休日は地域のクラブが部活動を担う体制づくりを進めている。