娘と息子で「期待する最終学歴」が異なる親たちの、ジェンダーへの「思い込み」 与えるおもちゃから、期待する最終学歴まで
※四本裕子 2022年「脳や思考・行動の男女差」日本ロボット学会誌, 40(1),21-24.
娘と息子で「期待する最終学歴」が異なる親たち
こうした幼少期からの声かけの積み重ねや、学齢期には教師などの「女子は理系科目が苦手」といったバイアスによって、理工系に進む女性が少なくなっている可能性がある。
それに加えて、親の言動や期待は、進路選択により直接的に影響することも指摘されている。教育社会学の研究者たちは、親が期待する最終学歴について、娘と息子に差があり、とりわけ相対的に収入が低い層においてこの傾向が顕著であることを指摘している。
つまり、経済的にゆとりがそこまでない家庭においてとくに、親は「男の子には、何としても大学に行かせたい」と考えるのに対し、娘に対してはさほど親が投資しない。
背景には、これが完全に根拠のない親の勝手なバイアスによるものだとも言えないところが残念なのだが、現代の日本は女性の就業継続や正規雇用が保障されにくい社会であり、実際に女性のほうが大学教育の経済的見返りが少ないという現状がある。また、娘の場合、親は実家から通える教育機関を望みやすいことや、浪人してまで子どもが志望校に進学することを重視しない傾向もある。
この話を大学生にしたとき、やはり次のように兄弟との差を感じている複数の女性学生から、「自分は第1志望に合格できなかったときに両親から『合格したんだから浪人しなくてもいいんじゃない』と言われたのに、附属校に通っている弟には『内部進学の権利を失ってもいいから国公立挑戦してみたら?』という話が出ていた」というエピソードや、「受験期時代に『女子なんだからそんなに勉強しなくていいのに』『どうせお嫁に行くんだから』といった言葉をぶつけられた」という声が上がった。
直接的、間接的に、親のバイアスは子どもに影響を与えてしまう。今一度、バイアスのある声かけをしていないか、内省をしてみてほしい。もちろん子どもは親の影響だけを受けるわけではなく、教師などさまざまな大人、そしてメディアなどの媒体からもバイアスを受け取る。
だからこそ、親としても、いかに自分の子どもを社会的に有利なポジションに押し上げていくかということよりも、世の中全体の大人たちのバイアスを払拭していくことにも関心を持ってほしい。それが未来を作っていくことになる。
(注記のない写真:Fast&Slow / PIXTA)
執筆:中野円佳
東洋経済education × ICT編集部
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