娘と息子で「期待する最終学歴」が異なる親たちの、ジェンダーへの「思い込み」 与えるおもちゃから、期待する最終学歴まで

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すると、女の子っぽい服を着せられている赤ちゃんに対しては、大人たちは概ねふわふわのぬいぐるみを差し出し、赤ちゃんの反応があろうがなかろうが、人形遊びに誘うのだ。

逆に、男の子っぽい服を着ている赤ちゃんには、男性であれ女性であれ、大人たちは、ロボットのようなおもちゃを差し出したり、抱き上げて車に乗せて体を動かさせたりする。「実はこの子は女の子/男の子なのですが……」と種明かしをすると、大人たちは「自分の中にバイアスがあった」と気づく、という動画だ。

この動画の発想のもとになったのは、心理学の「ベビーX」という実験とみられる。その実験を記した論文では、赤ちゃんが女の子だと言われると男性も女性も大人は人形を差し出す確率が高くなり、赤ちゃんの性別がわからないとされている場合、男性はジェンダー中立的なおもちゃを差し出すが、女性は人形を差し出すという大人側のジェンダー意識の差にも言及している。

残念なのはこの論文が1975年のもので、その当時からバイアスがあることは指摘されているにもかかわらず、2017年の先進国でも同じような現象が見られるということで、問題の根深さをうかがわせる。

与えられたおもちゃが「発達」に影響を与える

男の子は車や電車が好きで、女の子はぬいぐるみやお姫様が好き。このようなイメージを持つ大人は多く、実際に、幼稚園くらいの年齢の子どもたちに「好きなものを選んでね」と言うと、平均的には男の子は車や電車、女の子はお姫様を選ぶ比率が高いかもしれない。しかし、それは「作られた」性差である可能性がある。

まず、仮に生まれもった特性に性差があるとしても、思考や行動に関しては男女による差よりも個人による差が大きいとされている。おもちゃの好みについても、車や電車が好きな女の子や、お姫様で遊びたい男の子たちもいるはずで、性差より個人差のほうが大きい可能性が高い。

さらに、例えば5歳くらいで好みに平均的な差があったとしても、それは生まれ持った性差ではなく、周りの大人たちからの声かけや差し出されるものの積み重ねによって育て上げられた性差かもしれない。

『<新版>ジェンダーの心理学-男女の思い込みを科学する』(ミネルヴァ書房)は、どのようなおもちゃで遊ぶかが、発達に影響すると分析している。ミニカー、プラモデル、ラジコンカーなどは、何らかの工夫や操作をすることが必要で、物理的な世界の理解に役立つものが多い。一方、人形、ままごと、化粧道具などは、主に母親である養育者のまねをするものが多く、対人関係や社会についての理解に役立つものが多い。

さらに親は、このようなジェンダーに沿った遊び方をしているときに褒めたり一緒に遊んだりするが、反する遊びをしていると叱ったり無視したりすることがあると指摘されている。

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