地方高校生の「壁」、首都圏大学受験の情報・環境格差に挑む東大生団体の願い ロールモデル不在や予備校不足など課題は山積

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「先生から、『離島の高校生はそもそも大学生と話す機会がないため、話をしてほしい』という依頼をいただいたのです。過去には、沖永良部島にある鹿児島県立沖永良部高等学校に出張・オンラインのハイブリッドセミナーも実施しました。地方では、首都園の大学を目指す高校生だけでなく、大学生というロールモデル自体が不足していると実感します」(増村さん)

情報格差に予備校不足、地方高校生が地元にとどまる要因

地方の高校生が抱える“大学進学の壁”について、特によく寄せられる声は「そもそも情報がない」というものだという。

「情報格差や環境格差でハードルを抱えている地方の高校生は想像以上に多い。情報が足りないために、都会に進学するメリットを知る機会もなく、どうしても地元志向になりがちです」(山本さん)

また、メディアが東大を過度に神格化して受験生の心理的ハードルを上げていることや、地方の高校教員が大学受験対策に明るくないこと、難関大を目指すための予備校が不足していることなども、首都圏難関大学に合格するポテンシャルを持った高校生が地元の大学に進学する一因となる。

佐々木諒太(ささき・りょうた)
東京大学経済学部3年
FairWind副代表。宮城県仙台第二高等学校出身、高校時代はサッカー部に所属
(写真は本人提供)

「ほかにも地方では、首都圏と比較して授業の進捗が遅かったり、引退ギリギリまで部活動に積極的に参加すべきだという雰囲気があったりします。私も宮城県出身ですが、周りは東北大か地方の私立大の志望者ばかりで、東大を目指すライバルが圧倒的に少なかったです。お世話になった塾では、自分が10年ぶり、史上2人目の東大合格者でした」(佐々木さん)

実は、山本さんと増村さんは塾に通わずに東大に合格しているが、FairWindに寄せられる悩みには、「通える距離に塾がない」「親の意向で塾に通わせてもらえない」という内容も多いそうだ。

「このような場合は、自身の勉強の実体験を伝えています。全教科の自主学習ノートを作った話や、わからない問題にぶつかった際に教員や友人にサポートを頼んだ話などです。『自分もいけるかも』と感じてもらえればと願いつつ、相談に乗っています」(山本さん)

女子高生ならではの「壁」も存在する。

「私は一人っ子ということもあり、親戚からは地元の金沢大学への進学を勧められていました。女子を一人で都心に送り出すことの心配が大きかったのだろうと思います。そんな中、FairWindを通じて女性の東大生と話す機会がありました。『地方の女子だからって、東京に行けないことはない』と思うことができ、東大を目指すきっかけにもなりました」(増村さん)

地方出身というだけで自分の可能性を狭めないで

寄せられる声の中には、学生団体では解決しづらい内容も多い。一番はお金の問題だという。「親の手を離れて一人暮らしをするとなると、どうしてもお金がかかってしまいます。家賃が手頃な学生マンションや、家賃補助・奨学金制度がもっと充実すればと思うのですが」(山本さん)

FairWindの公式メールマガジン「追い風通信」。毎週水曜・日曜の午後8時に配信にされている
(画像はFairWind公式サイトから)
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