海外の「ホワイトハッカー育成」は何が凄いのか? 強化すべきは産官学の「人材育成エコシステム」
選抜は厳しい。視察時の話では、日本の大学入学共通テストに当たる「大学修学能力試験」において志望者の上位0.1%の成績を収め、その後の大学教授や軍関係者による3日間の面接と身体検査を通過する必要があるとのことだった。晴れて合格となれば、入学後の4年間の授業料は100%免除、毎月の生活費50万ウォンも大学から支給されるという。
卒業後は韓国陸軍の将校(まずは少尉から)として任官され、7年間はサイバーセキュリティに関わる専門士官として勤務することが条件だが、この学科に入ると、韓国の若者に課されている兵役義務が免除される。
また、歴史や外交政策などを学ぶ幹部教育を実施しているが、肉体を使う軍事教練は用意されていない。つまり、戦争の前線に行く機会がないため、わが子の安全を思って親が入学を後押しするケースも少なくないという。
「イスラエルのエリート養成プログラム」を参考
同学科の卒業生は、7年間の勤務を終えたらそのまま軍に残ってもいいし、民間に転職してもいい。政府機関への特別採用の道もある。起業したい場合は、政府からの援助も保証されている。
ホワイトハッカー人材が軍以外で活躍することを、民間企業や政府機関が歓迎しているのである。軍の作戦遂行能力の獲得だけではなく、国全体を守れる高度人材を育成することが目的となっているためだ。
これらの仕組みは、イスラエルの「Talpiotプログラム」(高校生の上位約1%を教育するプログラム)を参考に設計された。国がエリート養成を行い、軍で活躍後は起業も支援し、国際的に通用するサイバーセキュリティ産業の発展にもつなげている。
韓国はこれに倣い、国が主導でエリート養成を行いながら、国全体の人材育成のエコシステムにもつながる仕組みを作り上げた。韓国も日本と同様にセキュリティ人材の不足が課題となっているが、国防に関わる高度なホワイトハッカー人材については「量」よりも「質」が重要であることを国が理解していることがうかがえる。
結果的に、高麗大学校には、自国を守るという意義のほかに、「キャリアアップのために11年間修業する」という意識で入学を志望する学生も多いという。また、同学科は現在、これまで一番人気だった医学科に匹敵するほどの人気学科となっている。
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