ゼネコンよりサブコンが上?建設業界の新秩序 下請けとは「殿様と家来」の関係だったが…
2つ目はハウスメーカーがゼネコンを凌駕しつつあることだ。
ゼネコンは長年、住宅を手がけるハウスメーカーを下に見る傾向にあった。だが大和ハウス工業が準大手ゼネコンのフジタを傘下に入れるなどゼネコン化して、業容を拡大。大和ハウスの23年3月期の売上高は5兆円に迫り、ゼネコン首位の鹿島の2倍超に膨らんだ。
「2024年問題」でも大和ハウスは先手を打つ。ゼネコンは工事現場の4週8休(週休2日制)の実現が約8割だが、大和ハウスは「かなり前から4週8休ベースの受注」(村田誉之副社長)をしており、今ではおよそ90%の工事現場で実現している。
生産性の低さが指摘されるゼネコンに対し、大和ハウスはDXでも先行する。20年に建設デジタル推進部を設置し、「相当な額をDX領域に投資してきた。2024年問題を見据えてデジタル技術を積極的に活用する」(村田氏)。
デベロッパーとの力関係
新秩序の3つ目はゼネコンがデベロッパーへの発言を強めていることだ。
再開発工事を発注するデベロッパーの立場は圧倒的に強い。最近は大型再開発が多く、工事代金が巨額化し、失注したときの痛手が大きいため受注競争が激化。大手ゼネコンは、工事代金のダンピング(不当な安値受注)だけでなく、工期のダンピング(短工期の受注)にも手を染めた。
しかし足元ではゼネコンもデベロッパーに対する発言を強め、工期の適正化に動いている。鹿島の天野裕正社長は「われわれの工期の提案を理解していただけなければ、受注できなくてもやむなしとする事例も出てきている」と語る。
ゼネコンの業界団体である日建連も後押しする。23年7月、「適正工期確保宣言」を掲げ、会員企業に徹底するように呼びかけた。「建設業の働き方として土曜日に仕事をするのは当たり前という常識を変えなければならない」と日建連の山本徳治事務総長は話す。
3月8日には政府が、工期のダンピングを禁止する建設業法改正案を閣議決定した。
いびつだった業界構造が2024年問題をきっかけに改善され、労働環境の向上につながれば理想的だ。だが、対応に手をこまねいている中堅・中小ゼネコンは多い。
労働環境が変わらず、若者の就労が減り続ければ「将来的にインフラ構築を手がける人材が極端に不足する」(準大手ゼネコン社員)。社会問題に発展する懸念があるだけに、建設業界は本気の意識改革が求められる。
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