注目され始めた「生理」による機会損失や周囲の無理解、変革のカギは学校教育 経産省「月経随伴症状の経済損失は5700億円」

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コロナ禍で「生理の貧困」が注目され、トイレに生理用ナプキンを常備する学校が増えた。2023年12月には文部科学省が、生理に伴う体調不良も公立高校入試の追試対象とするよう全国の教育委員会などに通知している。しかし、生理に対する理解が学校や社会に浸透しているとは言い難いのが現状だ。学校教育における「生理」の課題とは何か、「日本のユース女性の生理をめぐる意識調査」を行った公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパンでアドボカシーグループリーダーを務める長島美紀氏に話を聞いた。

「生理の貧困」の背景にある「知識の貧困」

経済産業省が今年2月に公表した試算結果によると、女性特有の健康課題(月経随伴症状、更年期症状、婦人科がん、不妊治療)による経済損失は社会全体で約3.4兆円に上る。そのうち月経随伴症状の経済損失は、欠勤が約1200億円、パフォーマンス低下が約4500億円と計約5700億円であることが示された。

こうした生理痛やPMS(月経前症候群)などの影響を踏まえた健康経営に取り組む企業も出てきているが、生理に対する理解が社会に浸透しているとはいえない。例えば、今年の元旦に能登地震が発生した直後も、SNS上で生理用品の支援を軽視する意見をめぐって議論が起こるなど、生理に対する無理解が注目を集めた。

長島氏はこうした状況について次のように話す。

「本来は緊急事態であればあるほど生理は丁寧なケアが必要なはず。災害時や紛争下の支援として国際的に参照されている『人道憲章と人道対応に関する最低基準』(スフィア基準)にも衛生面への配慮が示されていますが、日本は災害が多い割には対策が十分ではなく、被災者はさまざまな我慢を強いられがちです。生理にも自助を求める声がなくならないのは、そうした日本特有の背景もあると思います。また、生理の仕組みをご存じないのか、男性の中には『経血量は自分でコントロールできる』など誤った知識を持っている方もいるようで、基本的な知識が浸透していない現状があるように思います」

さらに、生理に関する知識が足りていないのは男性だけではないという。長島氏は、「コロナ禍で『生理の貧困』が話題になりましたが、これは『経済的な理由で生理用品が買えない』という問題だけでなく、『知識の貧困』も背景にあると考えています」と語る。

長島美紀(ながしま・みき)
政治学博士。公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパンではアドボカシーグループリーダーとして政策提言事業に従事。とくにジェンダー主流化、「女性の社会での活躍」を中心に提言活動を行う。その他さまざまなNGO・NPO法人や財団の運営、広報・事業運営、政策提言活動などに携わる。認定NPO法人Malaria No More Japan理事、一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク理事、大妻女子大学非常勤講師
(撮影:梅谷秀司)

リスクにつながる「生理は隠すもの」という意識

公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパンは2021年に、「生理がある」と回答した15〜24歳の女性2000人を対象に「日本のユース女性の生理をめぐる意識調査」を行っている。

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