教員匿名座談会、日本のイマイチな「キャリア教育」の理由は「教員任せ」の裏側 「子の背を押す」ために親も教員に相談したい

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教員の負担増に懸念、キャリアパスポートも導入進まず

卓也:キャリア教育を推進するうえで、どのような課題がありますか?

A先生:先生の負担増につながることは、無視できない課題です。学習指導要領では、キャリア教育に割く時間が明示されておらず、すべての教科がキャリア教育に関連しているというスタンスです。総合学習でも社会科でも、家庭科でもよくて、教員の裁量に委ねられます。学校がある程度の方針を決めていないと、「これ以上は無理」とはなからキャリア教育を諦めてしまう教員も少なくないはずです。

B先生:文部科学省は、小学校から高校までのキャリア教育に関わる活動を記入して記録を保管する「キャリアパスポート」を学校側の管理で作成することを提唱しています。しかし、負担が大きいので活用できている学校はほぼないのではないでしょうか……。

C先生:個人的にキャリア教育はとても重要だと考えているので、もっと活発に機会を創出したいのですが、当校も教員が前向きではありません。ただ、最近は同僚の教員から「会社員経験を話してほしい」と声がかかることも。負担を増やしたくないという教員がいる一方で、キャリア教育が必要だと考えている教員も一定数いると思います。

卓也:キャリア教育を推し進めなきゃいけないとわかっていても、後回しになってしまうのが現状なんですね。

B先生:また、「自分のしたいことを探求できる生徒」はどうすれば増やせるのかというのも課題です。大学卒業後の未来を想像しつつ考えるわけですから、割と高度な思考力が必要です。私は勤務校で幅広い学力の生徒を指導していますが、正直学力が高く、家庭の経済力や教養力のある子のほうが、自分の将来もしっかり考えられている傾向があると感じます。この差をどう調整するかも問題です。

卓也:考える力が必要か……確かに、将来どうしたいかってかなり難しい問いですよね。それに、キャリア教育は不要だという親もいませんか? 例えば、有名大学に入ることを目標にして超進学校に通わせたのに、キャリア教育で本当にしたいことを考えた結果、「よし、お笑い芸人だ!」ってなったら、親は「えー! やめてー!」ってなる気がします。学校にとっても、進学実績に響くので都合が悪いですよね。

C先生:本人が考えた結果であればそれで良い、と言いたいですが、自分の子どもだったらなおさら、良い大学に進学してほしいと願ってしまうのが正直なところですよね。大学を偏差値で選ぶわけではありませんが、偏差値が高い大学は将来の選択肢を増やすとは思います。大人の役割は、色々な大学の存在を教えてあげたり、「あなたの夢のためには、このスキルを高めると良いと思うよ」と助言してあげたりと、可能性を引き出すことではないでしょうか。

A先生:子どもが生まれた時は「元気に過ごしてさえくれれば」と思っていたはずなのに、不思議ですよね。そもそも、この国には他力本願な人が多いのも問題だと感じていて。いい大学、いい企業に入れば安泰だと思っている。「この世の中を良くするのは自分だ」という気持ちを持てるかどうかですよね。

保護者が「キャリア部」結成でキャリア教育を担う例も

卓也:でも、もし娘に「学校は辞めてアイドルになりたい」と言われたら、つい「ちょっといったん話そうか」って言っちゃうかも……。そんな時、保護者の相談に乗ってくれる専門家が学校にいるとありがたいなと思います。子どものことをよく知っている先生方には、子どもの背中を押すことに躊躇している親の背中も押してほしいんです!

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