2カ月97人相談「福岡県いじめレスキューセンター」、第三者支援に強いニーズ 学校と保護者の膠着状態を解くカギとなるか?

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いじめの認知件数や重大事態の件数が過去最多となる中、行政が課題解決に乗り出すケースが出てきている。福岡県では、福祉労働部こども未来課が昨年11月に「福岡県いじめレスキューセンター」を開設。県内すべての児童生徒を対象に、いじめの解決に向けて取り組んでいる。その仕組みや直近の状況などについて担当者に話を聞いた。

約4割は学校が「いじめの重大事態」を認知できていない

文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によれば、福岡県のいじめの認知件数は、2022年度で1万6587件。2017年度の8926件と比較すると、5年間で約7600件と大幅に増加している。

全国的に見ても、2022年度のいじめの認知件数は68万1948件と過去最多だ。さらには子どもの生命、心身、財産に重大な被害が生じた疑いのある「いじめの重大事態」の件数も過去最多となり、そのうち約4割は学校がいじめと認知していなかったという結果が出ている。

こうした事態を重く見た福岡県では、いじめの重大化・長期化を防ぐために2023年11月1日に「福岡県いじめレスキューセンター」を開設。公立か私立かを問わず、県内すべての小中高生を対象とし、学校には相談しづらい、あるいは、学校に相談したけれど第三者の支援がほしいといういじめの相談に対応している。

担当するのは、こども家庭庁のカウンターパートとして昨年4月に新設された部署「福祉労働部こども未来課」だ。同センターは、こども家庭庁の令和5年度事業「地域におけるいじめ防止対策の体制構築の推進」の委託費で運営されている。同課居場所づくり係長の宗健一郎氏は次のように語る。

「これまでは学校と教育委員会がいじめ問題に対応してきました。認知件数の増加は、それだけ学校側が積極的に対応していることの表れであるとも言えますし、今後もいじめ問題は学校が対応するという基本は変わりません。しかし、約4割は学校が『いじめの重大事態』と認知できていないという現状を踏まえると、早期発見・解消を図るには、学校外の立場からも対策に取り組む必要があると認識しています。学校や教育委員会と連携を図りながら、県総がかりでいじめ問題に対応したいと考えています」

専門家が相談に対応、3カ月後にはフォローアップも

同センターでは、宮城県仙台市のいじめ等相談室「エスケット」の支援スキームを参考に、専門家が対応する体制を構築したという。

相談者に直接対応するのは、社会福祉士や精神保健福祉士などの資格を持った支援員で、2~3名を常時配置している。また、専門員として非常勤で弁護士を4名置き、相談を受けた後の対応を話し合う週1回の検討会議において助言を受けている。

そのほか会計年度職員の事務職員1名が、相談者の要望に応じて学校側とやり取りする場合の窓口業務を担当。学校に訪問する必要がある場合は基本的に支援員と事務職員が出向く方針だが、ケースによっては弁護士が訪れることも想定している。

電話とメールでの相談が多いが、希望や必要に応じて予約制で面談も行う。相談者のほとんどは保護者だが、相談内容を学校に伝えるかどうかなど、当事者である子どもの気持ちや考えを尊重しながら確認を繰り返し、慎重に対応しているという。学校に相談者の要望を知らせる際も、事前にその旨を教育委員会に共有するなど連携を図っている。

予約制で面談も行っている

「教育庁によるLINEや電話での子どもの悩み相談窓口がありますが、そこでは傾聴と助言が中心。一方、いじめレスキューセンターでは、相談者の要望があれば、学校とやり取りを続け、いじめの解消を目指して対応を行っています。いじめは簡単になくなるものではないのですが、相談者の最後の相談から3カ月後をメドに、その後の状況について電話でフォローアップするのも大きな特徴といえます」

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