2カ月97人相談「福岡県いじめレスキューセンター」、第三者支援に強いニーズ 学校と保護者の膠着状態を解くカギとなるか?
見えてきた「第三者の支援」に対する強いニーズ
2023年11月1日の同センター開設初日には、10件以上の相談があった。その後も日々10件程度の相談があり、相談件数は開設後の2カ月間で延べ279件に上った。校種や学年を問わず満遍なく相談があるという。
「1人の相談が1回で終わることがないケースはよくあり、実件数でいえば97件ですが、たった2カ月でこんなにも相談が寄せられたことにかなり驚いています。また、当初は学校に相談しづらいケースが多いと考えていたのですが、実際には、学校に相談したけれど納得がいかないため第三者の支援がほしいといったケースが多く、私たちのような立ち位置に対するニーズの強さを実感しています」
例えば、「学校にいじめの相談をしたが、単なる友人間のトラブルとして捉えられている」という相談があった際は、同センターが、学校に相談者の思いを伝えた。連絡を受けた学校は調査を開始し、その事案はいじめとして認知されたという。
このような場合、「きちんと学校が対応してくれる」と安心する相談者もいるが、同センターに寄せられる相談は、そもそも学校と保護者との関係がこじれているケースも多いと宗氏は明かす。
「福岡県は、寝屋川市のように子どもたちをいじめから守るための条例などはつくっていないため、加害児童の出席停止を勧告するなどの強い権限は持っていません。ときには加害者の謝罪を求めたいというケースなど学校側が苦慮する事案があるのですが、私たちもあくまで第三者として『お伝えする、お願いする』という立場にあり、対応が難しい事案は多いです。また、『加害児童を指導した』と学校から連絡があったとして、それを解決とみなしてよいのか。実際、いじめはなくなったものの、不安があって学校に行けないということで相談支援が続いているケースもあります。何をもっていじめの解消とするかは難しく、粘り強くご相談に対応していく必要があると考えています」
昨年5月、福岡市の私立高校に通う女子高校生が遺書を残して自殺した問題では、福岡県の担当部局内の連携が取れていなかったほか、学校が県に報告せず、9月まで重大事態認定に至らなかったという経緯がある。これを受け、県は11月、県と県教委が学校や保護者、警察などからいじめの情報を得た際、県の重大事態再調査委員会を所管する部署と情報を共有するほか、学校に対して1週間以内に報告書を提出するよう求めることなどをルール化した。今後も県は、いじめの対応に注力する方針だ。
「『こどもまんなか社会』を考えるうえでも、いじめの問題は看過できるものではありません。年度途中にいじめレスキューセンターの設置に踏み切ったのも、それだけ県が解決に注力しようとしているということ。今後いろいろな課題が見えてくると思いますが、学校と保護者が膠着状態にあるケースは多く、第三者の私たちが入っていく意義は大きいと考えています」
(文:國貞文隆、写真:福祉労働部こども未来課提供)
東洋経済education × ICT編集部
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