大学に行けなくなった彼が社会に踏み出せた理由 不登校もひきこもりも状態を示す言葉に過ぎない

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

思いがけない知らせに慌てて息子さんに連絡をとりますが、返事がなく、急遽一人暮らしをする彼のアパートへと向かったそうです。到着すると部屋はゴミが散らかり放題で、本人は抜け殻のような状態。見かねた両親はその場で、大学へ休学届を提出することを決断し、彼を実家に連れ帰りました。

実家へ帰ってからは無理に理由を聞くことはせず、息子さんが安心して家ですごせるよう意識して、生活を送ったそうです。そうして1年ほど経ったころ、息子さんから「もうすこし自力で生活をしたい。自動車免許を取りたいからお金を貸してください」と申し出がありました。教習所に通うことになった息子さんは、免許を取得する過程で社会とのつながりを持てたことが自信になったのか、その後アルバイトを始めます。週1ペースの勤務からスタートし、いくつかの勤務先を転々としたあと、3つ目のアルバイト先に縁あって長く勤めることに。

そのうち会社から「社員として働かないか」と声がかかり、両親に相談のうえ、彼は自分の意思で入社を決断しました。今は社員として働いています。

家が安心の軸に

2年~3年の不登校・ひきこもり期間があった彼が、どうして社会へ1歩踏み出す決断ができたのか、気になりますよね。ご両親も気になり、「当時、怖くはなかったの?」と本人に聞いたそうです。両親からの問いかけに、彼は一言「もしダメになったら、家に戻ってくればいいかなと思っていた」と答えたそうです。

家が安心できる場所だったからこそ、彼は挑戦する1歩を踏み出すことができました。どんな自分でも受けいれてもらえる環境があることは、人に希望を与え、行動を促します。不登校もひきこもりも、その人の状態を示す言葉のひとつでしかありません。彼らが何を感じ、何を考え、何を求めているのか。彼らの思いをそのまま受けとめることができたら、事態は自然と動き出すのかもしれません。それには親だけでなく、多くの人の支えが必要なのだと、あらためて実感した出来事でした。

■執筆者/土橋優平(どばし・ゆうへい)
NPO法人キーデザイン代表理事。不登校支援のほか保護者向けLINE相談「お母さんのほけんしつ」を開設中。

不登校新聞の関連記事
「人生は楽しいと意地でも子どもに伝えたい」児童文学作家・はやみねかおるが語る楽しく生きるためのコツ
「もうムリだ」自分を殺そうとした少年が自分の「好き」を見つけるまで
「不登校、いじめ、自殺が過去最多」子どもに関わる2023年の出来事をふり返る

不登校新聞

日本で唯一の不登校専門紙です。不登校新聞の特徴は、不登校・ひきこもり本人の声が充実していることです。これまで1000人以上の、不登校・ひきこもりの当事者・経験者が登場しました。

また、不登校、いじめ、ひきこもりに関するニュース、学校外の居場所情報、相談先となる親の会情報、識者・文化人のインタビューなども掲載されています。紙面はすべて「親はどう支えればいいの?」という疑問点から出発していると言えます。

公式HP 

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事