パナマ運河の水不足問題、解決策には多額の費用 いずれの選択肢も、実行には何年もかかる見通し

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「こうした状況は受け入れ難く、運河として国として何らかの対策を講じなければならない。システムをもう一度調整する必要がある」とパナマ運河庁の責任者エリック・コルドバ氏はインタビューで語った。

エリック・コルドバ氏Photographer: Walter Hurtado/Bloomberg

パナマ運河の苦難は、気候変動が世界の貿易の流れをどのように変えているかを反映している。昨年は米ミシシッピ川と欧州のライン川で干ばつによる水位低下が渋滞を引き起こした。英国では海面上昇でテムズ川沿いの洪水のリスクが高まっている。北極圏では氷の融解によって新たな航路が生まれつつある。

通常であれば、パナマ運河は世界の海上貿易量の約3%、北東アジアから米東海岸に向かうコンテナの46%を扱っている。同運河はパナマ最大の収入源であり、2022年には43億ドルをもたらした。

乾期を通して1日24隻の船舶が通れるよう、パナマ運河庁は二次貯水池であるアラフエラ湖から放水する。コルドバ氏によれば、5月に降雨量が増え始めれば、運河の交通量を増やすことができるかもしれない。

水の確保にはさらに多くの河川をせき止める必要

だが、これは短期的な解決策だ。長期的には、慢性的な水不足に対する主な解決策はインディオ川をせき止め、山を貫くトンネルを掘り、運河の主要貯水池であるガトゥン湖に8キロメートルにわたって淡水を送り込むことだ。

コルドバ氏は、このプロジェクトと追加的な保全対策には約20億ドルのコストがかかると見積もっている。せき止めて淡水で満たすには少なくとも6年はかかるという。米国陸軍工兵隊が実現可能性調査を行っている。

インディオ川貯水池ができれば、パナマ運河で1日当たりの船舶の往来が11-15隻増え、過去20年間の建設ラッシュでマイアミのように高層ビルが立ち並ぶ首都パナマ市への真水を確保しつつ、運河をフル稼働させ続けるのに十分となる。パナマが今世紀末まで水を確保するためには、さらに多くの河川をせき止める必要がある。

この提案を進めるのは容易ではない。議会の承認が必要であり、貯水池のために水没する土地に依存している何千もの農家や牧場主は、すでに反対するために組織化している。

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