千葉県で認証制度スタート「自然環境保育」が幼・保の質向上に寄与する訳 森や山、川、海などでの活動通じて創造性育てる

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わが子のために自然環境保育を選択しようと思っても、都市部に住んでいるためにあきらめている人もいるはずである。自然が豊かな千葉県南部に引っ越せば実現できる可能性はあるが、仕事のことなど考えれば簡単ではない。

「県が支援することで都市部でも自然環境保育が実施できれば、保護者が施設を選ぶときの選択肢が広がります。自然環境保育が広まれば、子どもたちの成長にも、きっとプラスになります。一部の地域のためだけでなく、全県にプラスになるように考えるのが県の役目だと考えています」と、増田氏。

制度をきっかけに自然環境保育に取り組む意欲を高めた

実は、今回認証を受けた76団体では、都市部の施設が多いという結果になっている。自然環境が整っていない中で「自然環境保育は無理」とあきらめていた施設が、制度をきっかけに自然環境保育に取り組む意欲を高めた結果ともいえる。まさに、県の狙いどおりである。

もちろん、今回の76団体の申請・認証だけに、県として満足しているわけではない。「さらに広がるといいですね」と、増田氏も期待している。

認証の対象も、幼稚園や保育所、認可保育所、認可外保育所、認可こども園、さらには自然環境保育を自主的に実践している森のようちえん、など幅広い。そこにも、自然環境保育を普及したいという県の思いが反映されているようだ。

支援する団体が増えれば、当然ながら、予算も増えることになる。認証区分には2種類あり、「重点型」は週に10時間以上の自然体験活動が義務づけられている。この認証を受けた団体には、運営費として年間で上限20万円が補助される。

もう1つ「普及型」があり、こちらは週に5時間以上の自然体験活動が必要になる。そして補助は、上限で年間10万円となっている。

「草花の苗を買ったり、貸農園を借りるなどの費用に使われると想定しています。職員が安全のための研修に参加するための費用に使われることもあると思います。初年度ですので、どういう使われ方をするのか分析できていません」

今後の運用実績で、「うちでもできる」という施設が広がっていくに違いない。そして、「これだけの補助では足りないから増やせ」という要望も出てくる可能性はある。

そうなると、県としての負担も増えていかざるをえない。その懸念について尋ねると、「がんばるしかありません」と増田氏は笑った。

全国的に、待機児童の問題は小さくなりつつある。そういう中で「質」の問題が急浮上してきている。千葉県の試みは、これから注目を集めていくことになりそうだ。

(注記のない写真:akmphoto / PIXTA)

前屋 毅 フリージャーナリスト

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まえや つよし / Tsuyoshi Maeya

1954年、鹿児島県生まれ。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。著書に『学校が合わない子どもたち』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』(朝日新聞社)、『ほんとうの教育をとりもどす 生きる力をはぐくむ授業への挑戦』(共栄書房)、『ブラック化する学校 少子化なのに、なぜ先生は忙しくなったのか?』(青春出版社)、『教師をやめる 14人の語りから見える学校のリアル』(学事出版)など。

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